昭和が終わりを告げる直前の1988年(昭63)11月1日、田中将大は兵庫・伊丹市で生まれた。駒大苫小牧高、楽天、ヤンキースと野球界のトップを走り続け、楽天時代の13年には、無傷の24連勝でイーグルスを初の日本一へ導いた。先頭を切って平成を駆け抜け、新時代へ挑む怪腕。今、何を考え、どこを目指していくのか-。


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歴代名将を師として育つ

<取材後記>

記事を書くことを生業にしている以上、取材の経緯や裏側をバラすようなことは、本来であればしたくない。ただ、今回の連載取材を打診したところ、ヤンキース田中将大投手(30)は当方が考えている意図を真剣に受け止め、正面から対応してくれた。

そもそも、現役真っただ中でバリバリのメジャーリーガーに対し、現状や今後ならともかく、過去を振り返ってもらうこと自体、実は礼を失する。現役でいる限り、過去を振り返るのは「引退してから」と言い切る選手も少なくない。

それでも、田中はマウンド上で真剣勝負する姿勢通り、率直に、心を開いて向き合ってくれた。無理を承知で依頼すれば、プレーオフ進出をかけて戦っていた今季終盤、空いた時間に話を聞くことは可能だったかもしれない。だが、おそらく田中は、基本的に「無機質な」質疑応答など求めていない。だからこそ、全日程を終えたオフ、プライベートな時間を割いて、これまでの野球人生を丁寧に振り返ってくれた。

「昭和生まれ」としては最後のプロ野球選手世代。野村克也、星野仙一ら歴代の名将を師として育ったことも、田中が心身ともに、多岐にわたって熟した要因に違いない。好みのアイドル、テレビゲームに隔世の感はあっても、平成で活躍してきた田中の誠実な姿勢に、昭和の「残り香」を感じたのは、おそらく気のせいではない。【四竈衛】


13年10月、楽天対オリックス 開幕24連勝を飾った楽天田中将大
13年10月、楽天対オリックス 開幕24連勝を飾った楽天田中将大

◆田中将大(たなか・まさひろ)1988年(昭63)11月1日、兵庫県生まれ。駒大苫小牧2年夏に甲子園優勝。3年夏は斎藤(早実=現日本ハム)と投げ合い決勝再試合の末、準優勝。06年高校生ドラフト1巡目で楽天入団。13年はプロ野球新記録の開幕24連勝をマークし、楽天を初の日本一に導いた。同年オフにポスティングシステムでヤンキース移籍。今季まで日本人初のデビューから5年連続2桁勝利。188センチ、98キロ。右投げ右打ち。夫人はタレントの里田まい。