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侍ジャパンメンバー

投手 田中 将大

#17 Masahiro Tanaka
田中 将大

(C)NPB/BBM2013

所属 楽天
今季年俸 4億円
投打 右右
生年月日 1988/11/1
出身地、経歴 兵庫、駒大苫小牧
身長・体重 188センチ・93キロ
2012年成績 22試合、10勝4敗0S、防御率1.87
五輪、WBC出場歴 北京五輪、第2回WBC

フォーク捨て長打減らした

田中 将大

 2年前のオフが、侍のエースへと脱皮する転換期だった。その時、田中将大投手(24=楽天)は大量の書類を手にしていた。プロ4年目の10年、チームトップの11勝を挙げたが、8月末に右大胸筋部分断裂で離脱。ローテを守れなかった。このままではいけない。そんな思いもあったのだろう。目を落とした紙の山に、翌年の沢村賞へと続く宝が眠っていた。

 「長打は、ほとんど全部フォークじゃないか」

 その年の全投球チャートだった。20試合で643人に計2301球。対戦打者ごとにストライクゾーンを内外高低に分割し、1球ずつ球種と結果が記されている。丹念に見返した。いかに抑えたか、ではない。いかに打たれたか、に注目した。許した安打は計159本。そのうち、35本が長打だった。その多くが「フォークが抜けて、高めに浮いた失投」と気が付いた。

 この発見が始まりだった。11年の春季キャンプからフォークを封印。代わりに、スプリットフィンガード・ファストボール(SFF)を勝負球とした。通称スプリット。フォーク同様、人さし指と中指の間にボールを挟むが、フォークほど深く握らない。浅く握る分、小さい落差で鋭く落ちる。「低めからボールゾーンへ。失投しても、ほとんどワンバウンドになる。長打のリスクが減る」。落差は減ったが、高めの抜け球も減った。10年の被打率2割7分が、11年は2割1分2厘に。許した長打も35本(10年)から27本(11年)に減った。飛ばない統一球に変わった年ではあるが、田中にとってはスプリットへの転換が大きかった。

 行き詰まると、人は原因の改善を図る。フォークが浮く。普通はフォークの質を上げ、低めに制御しようとするだろう。だが、田中はフォークそのものを捨てることで道を開いた。もっとも、やみくもに逆転の発想をしたわけではない。しっかりした根拠があった。

 1つは「変化の軌道」。田中には、フォーク以外にも強力な勝負球がある。スライダーだ。「僕のスライダーは縦に変化する。じゃあ、フォークはやめようと」。フォークをなくしても、落ちる球がある。投球の幅を狭めることにはならないという確信があった。

 もう1つの根拠が「球速」だ。135キロ前後のフォークが、スプリットだと10キロ近く速くなった。「直球に近い球速で落とせるから効果的」と自ら解説する。最速150キロほどの直球に近づいたことで、落差は減っても威力は増した。

 女房役の嶋が証言する。「田中がほえるのだけ見ると、力だけで抑えていると思われるかも知れない。でも、過去の対戦データを登板前にかなり見返している。打たれたらフォームや配球の確認をする。そういう姿勢は、他の先発と比べても人一倍です」。体だけではない。頭脳もフルに使い、結果を出してきた。

 前回大会時にはなかったスプリットをひっさげ、自身2度目のWBCに挑む。その宝刀の力を示す数字がある。スプリット導入前の10年、589打数で35長打を打たれた。確率は5・9%。それが11年は3・4%に減少した。減った2・5%の分だけ、長打を打たれにくくなった。初顔や一発勝負が増える国際試合では大きなメリットとなる。「マイナス2・5%」は、田中が侍のエースたるゆえんでもある。【古川真弥】

 (2013年1月13日付日刊スポーツ紙面掲載)









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