指揮官のポリシーは「野球で人生を豊かに」。続けて、「野球が人間教育になり、野球で頑張ったことは人生で生きる。その後も、『いい人生が送れたらいいよね』って」。練習のほか、月1回ペースでナインへの栄養士から栄養指導、保護者への栄養士によるレシピ配布を行うなど栄養指導が充実。筋力を増やし、体脂肪を15%とするナイン理想の体形を目指し、「何でも挑戦して、いいものをみんなに還元したい」と指揮官自らも“超積極的”な姿勢で学び、ナインへ惜しみなく情報を伝えている。
自身も生まれ育った地元の名門・磐城(福島)の硬式野球部OBで、同学年の涌井秀章率いる横浜とも練習試合で対戦した。「甲子園に出られなかったので、指導者として出たい」と教師を志した。さまざまな垣根を越えた交流を指揮官は後押し。毎年12月には全国の障がい者野球チームとの対戦を行う。世代や地域を越えた交流に力を注いでいる。
学校創設は1908年(明41)で水高(すいこう)として親しまれる県内屈指の伝統校だ。野球部は1948年(昭23)に創部。高校の校舎から道路を1本はさんだ、歴史の趣が漂う場所でナインは汗を流す。練習場所は1634年(寛永11)に3代目徳川家光が上洛(じょうらく)時、宿泊先として築城した水口城の城跡に隣接。サッカー部、ソフトボール部、陸上部と共用グラウンドだ。24人の選手、4人の女子マネジャー、1人の男子マネジャー。寒空の下でナインの熱い声が飛び交う。
今秋の県大会1回戦は八日市に6-5で勝利。2回戦は米原、3回戦は膳所にコールド勝ちした。準々決勝は同大会で優勝した滋賀学園に4-6で惜敗も、県8強という実績と学業との両立。さらにチームカラーである生徒が主体的となって取り組む姿勢が評価されて県推薦校に選ばれた。
13日に21世紀枠の全国各地区の9校の候補が選出され、その後1月24日に2校が選ばれる。選出されれば同校にとっては、校名が甲賀の1968年(昭43)以来、58年ぶりの出場で現校名となっては初出場となる。柳内監督は「他喜力(たきりょく)って言葉があって。アルプスに人を呼びたいんです。この街を盛り上げたい、喜んでもらいたい」と力を込める。まずは13日の吉報を待つ。【中島麗】
◆近畿の21世紀枠推薦校
京都・山城・4強
奈良・奈良・準優勝
和歌山・紀央館・8強
大阪・市岡・16強
兵庫・西宮東・8強
滋賀・水口・8強
※成績は秋季府県大会。すべて公立校