元ロッテの里崎智也氏(野球評論家)の「ウェブ特別評論」を掲載。58回目は「今季の反省、修正点と期待選手~パ・リーグ編」です。

2018年も残りわずか。10年ぶりパ・リーグを制した西武。リーグ2位ながらプレーオフを勝ち抜き2年連続日本一に輝いたソフトバンクと話題の多かった今シーズンだが、すでに来季へ向けた戦いは始まっている。

今季の反省、修正点を振り返りつつ、来季の期待選手を挙げてみた。まずパリーグ編。


【西武】

10点取られても11点取り返す雰囲気を持つ「山賊打線」の破壊力は満点だった。いっぽうディフェンス面ではリーグ最多失点、最低防御率、最多失策…。不名誉な3部門制覇での優勝は、プロ野球史上初の珍記録となった。

最低防御率での優勝は「いてまえ打線」を誇った01年近鉄以来17年ぶりだった。近鉄は翌02年も最低防御率だったが、連覇はならず。「打線は水もの」と俗に言われるが、それを物語る結果となった。

CSファイナルステージでソフトバンク相手に5試合計44失点では、さすがの打線もカバーできない。

惜しくも日本一シリーズ進出はならなかったが、シーズン中の打線はすばらしかった。18年度はチーム打点761(前年比+101)盗塁数132個(同+3)打率2割7分3厘(同+9厘)でリーグ1位、本塁打数は196本(同+43=リーグ2位、1位はソフトバンク202本)と打力、機動力ともに文句なしだった。

19年も連覇の期待がかかるが、FAで浅村が楽天に、炭谷が巨人に移籍。14勝4敗の菊池雄星もメジャー移籍を狙っており、主力3枚が欠けるとなれば戦力ダウンは誰がみても必至。浅村の抜けた二塁手は外崎が埋めるのか、新戦力が出てくるのか。外国人補強で乗り切るのか。

山川が今季MVPだったが、浅村が選ばれても不思議ではなかった。貯金10を稼いでくれた雄星とともに投打の主力2人の不在は首脳陣にとっても頭が痛いだろう。打線もさることながら投手陣の整備がまずは急務となる。

<期待の選手>

雄星の穴を埋めるのは誰か。今井が5勝5敗、防御率4.81。数字的にはまだまだ物足りないが20歳と若いだけにエースへ成長できるかに期待したい。夏の甲子園V腕は、ただ者ではないことを証明してほしい。エースへのステップとなる年。防御率の改善、先発としてゲームをつくることがまずは大事だ。


【ソフトバンク】

今宮、和田、サファテ、岩崎らけが人続出の中、リーグ2位は逆にすごい。最下位でもおかしくないが「勝利の方程式」の岩崎、サファテ不在の中で日本一となった底力は半端ない。森を守護神に据えて加治屋、大竹ら育てながら「新・勝利の方程式」を編成した。岩崎、サファテが、けがから戻ってくれば投手層に厚みが増す。芽が出てきたのは加治屋、大竹だけじゃなく岡本、高橋礼も成長した。投手陣の苦しい台所事情を改善しようと努めた結果、若手が続々と出てきたのはプラス材料。中継ぎ陣が充実してくるとダブり感も出てくる。スアレスを先発起用するプランがあるとの報道もあった。デスパイネ、サファテ、モイネロ、ミランダ、バンデンハークに加え、グラシアルも大筋合意とのことでいずれも助っ人は実力者ぞろい。外国人4枠の使い方も頭を悩ませるところだ。二遊間も牧原、川瀬、高田、川島、明石、西田もCSではいい働きをした。上林もレギュラーをつかみ、全体的に不安要素はけがのみ。

<期待の選手>

アンダースローの高橋礼に期待したい。CSでも先発、中継ぎと起用されたニュータイプ。投球フォームも良く、どちらでもフィットしやすい。


【日本ハム】

大砲レアードの退団は痛いが中田翔、近藤、西川としぶとい打者が多い。2番に据えた大田泰示も良かった。レアードの後を横尾が埋めるのか。手薄は二塁と三塁か。攻撃面はある程度、計算できそうだが、二遊間の失策35はパ最多。ディフェンス面の強化も急務。さらに一番の課題は投手力。絶対的なエースが不在の中、今季11勝6敗の上沢が15~16勝できるまでに成長できるか。オリックス金子の獲得はもちろんプラス。

選手が若く、チームも成長している。ホップ・ステップ・ジャンプで言えばジャンプの年。

<期待の選手>

捕手の清水優心に注目している。22歳の若さに加え、今季86試合に出場し経験を積むことができた。打率2割1分5厘は低いものの7本塁打のパンチ力は魅力的で思い切りがいい。ハマれば面白い。


【オリックス】

チーム唯一2桁10勝の西、4勝7敗に終わったとはいえ、実績のある金子の2枚看板が消えた。エース格2枚抜きは私も聞いたことがなく非常事態。投手陣の整備は急務も急務。先発枠で名前が浮かぶのは山岡、アルバース、ディクソン、田嶋。田嶋は1年間体力が持てば面白いが…。外国人補強で難局を乗り切るしかない。野手の中島宏之も抜けたが自由契約だったため移籍先の巨人から選手を獲得することもできない。選手個々では、吉田正尚ら能力の高い選手も多いが、組織で戦っている感がない。野球は組織で団結して取り組まねばならない部分もある。今季はAクラスでもおかしくないと思っていたが…19年はどうなるか。

<期待の選手>

20歳の若武者・山本由伸が投手陣の穴をどこまで埋められるかに期待したい。個人的には先発で10勝するポテンシャルがあり、適性もあると思っている。今季はおもに中継ぎで54試合に登板し4勝2敗、32ホールド、防御率2・89の好成績。17年に5試合先発経験があるが、中継ぎでプロの駆け引きも身につき配置転換も面白いのでは。中継ぎでは超一級品で実力はハマれば侍レベル。ストレートに力がある。フォームのバランスも良く先発で常時いいボールを投げることができる。ポスト西&金子は山本しかいない。


【ロッテ】

選手層の薄さは否めない。来日1年目のボルシンガーが13勝2敗の活躍を見せたが、貯金11勝の右腕が現れ5位。助っ人右腕なしなら、おそろしいことになっていた。野手陣はレギュラー固定で戦ったが、まだまだ控え選手との差が激しい。井上は打撃ベストテンの7位となる2割9分2厘、99打点、24本塁打の好成績。中村も打撃10位となる2割8分4厘、39盗塁と活躍した。19年も継続して活躍できるか見守りたい。ZOZOマリン球場は来季から少し狭くなるため本塁打数が多少なりとも増える。78本塁打はパ6球団で最低だった。被本塁打が増えるようだと球場改修の意味がないが、ロッテ打線にとってフォローとなるか。外国人助っ人がハマらなければ厳しいと見ている。

<期待の選手>

平沢大河に期待したい。今季112試合に出場した。試合には出たものの本当の意味でレギュラーをつかんでおらず、首脳陣が将来に期待して経験を積ませてくれた印象。経験を生かせるか4年目の来季が勝負。外野手は飽和状態。藤岡裕との競争に勝ってショートで結果を出せば使ってくれる。打率2割1分3厘は寂しい数字、打つしかない。


【楽天】

大穴の優勝候補だ。浅村の加入が大きいことは言うまでもないが、さらに投打に若い選手で成長著しい選手が多い。藤平、新人王の田中、島内、内田、西巻と名前が次々に挙がる。投手陣も2桁勝利が計算できる則本に岸、右肘後方のクリーニング手術を行った美馬が先発で復活できるか。トレードで広島福井を獲得し先発の層も厚くした。古川、辛島、藤平の中から誰かが先発の柱として出てくれば面白い。松井裕樹は抑えを目指すという報道が出ていたが、新外国人としてツインズからFAとなった最速153キロの中継ぎ右腕、アラン・ブセニッツ投手も獲得。来季の4番候補としてエンゼルスのジャバリ・ブラッシュ外野手を獲得。石井GMの人脈で補強も順調のようだ。最下位からの優勝も夢ではない。ソフトバンクの対抗馬は楽天とみた。

<期待の選手>

投手では藤平。今季2桁勝つかと思ったが、2年目のジンクスなのか伸び悩んだ。3年目の来季に期待したい。

野手では内田と西巻だ。10月にコロンビアで開催されたU-23W杯で選ばれた侍戦士。内田は打率が2割を割るなど低いがパワーは抜群で1軍で今季12本塁打を放った。西巻も足、小技とキャラクターが立っており、定位置獲得なら攻撃のバリエーションも増える。

◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経て98年にロッテを逆指名しドラフト2位で入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。06、07年ベストナインとゴールデングラブ賞。オールスター出場7度。05、09年盗塁阻止率リーグ1位。2014年のシーズン限りで引退。実働15年で通算1089試合、3476打数890安打(打率2割5分6厘)、108本塁打、458打点。現役時代は175センチ、94キロ。右投げ右打ち。