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大橋ジム30周年記念

大橋会長語る30年『川嶋の背中を八重樫が、八重樫の背中を尚弥が見てきた』

井上尚弥

(Naoya Inoue)

プロ通算26勝(23KO)

井上拓真

(Takuma Inoue)

プロ通算19勝(5KO)1敗

WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ 井上尚弥対アドリアン・エルナンデス 新王者となり父真吾トレーナー(左)、大橋秀行会長(右)と喜ぶ井上尚弥=2014年4月6日

大橋秀行会長の現役最後の試合は93年2月10日、東京体育館で行われたチャナ・ポーパオイン(タイ)とのWBA世界ミニマム級王座初防衛戦だった。

判定で敗れて王座を失った後、引退を決断する。その試合の2カ月後、4月10日に生まれたのが井上尚弥だった。

大橋 オレの夢をかなえるために生まれてきた。偶然かもしれないけど、今、そんな因縁めいたものを感じるよね。

大橋会長には現役時代にかなえられなかった夢があった。高校1年でインターハイ優勝、日本最速のプロ7戦目で世界王座獲得、そして3階級制覇。そのすべての夢を、尚弥はドラを乗せて実現させた。

大橋 自分は高2のインターハイで優勝したけど、尚弥は1年で優勝。自分も米倉会長も八重樫も、勝てば日本最短記録のプロ7戦目で世界に挑戦して失敗したけど、尚弥は6戦目で世界王者に。あと自分の夢は3階級制覇だったけど、尚弥は4階級制覇を達成。夢のさらに上を実現してくれている。

ボクシングWBC世界バンタム級暫定王座決定戦 井上拓真対タサーナ・サラパット 8回、タサーナ・サラパット(右)に左パンチを放つ井上拓真=2018年12月30日

井上のニックネームは『モンスター』(怪物)。その底知れぬ才能にほれ込んだ大橋会長が、プロ転向時に命名したものだ。その才能の塊を、世界屈指の名王者へと開花させのが、大橋ジムの30年に及ぶ拳の歴史である。

大橋秀行会長

最初が川嶋で良かった

大橋 プロたたき上げで、ジム初の世界王者になった川嶋の存在が本当に大きい。練習では3分間、常に全力を出し切る。おそらく3分間の集中力は八重樫や尚弥より上。そのひた向きさをアマチュアエリートの八重樫が見て、川嶋以上の練習量を自分に課す。その八重樫の背中を尚弥が見ていた。尚弥はただの天才じゃない。努力もものすごい。その意味で最初が川嶋でよかった。彼がいなければ今の大橋ジムはなかった。

ジムとしても14年、井上の減量苦を受けて、栄養面のサポートを受けるために明治(サバス)と契約。日常の食事、プロテインの摂取方法などのアドバイスを受ける体制を整えた。また八重樫は、現役時代からあらゆるフィジカルトレーニングを練習メニューに取り入れ、自ら研究も重ね、肉体改造に成功した。その八重樫が今、井上のフィジカルトレーニングを指導している。

大橋 この流れも大きい。尚弥もライトフライ級時代の無理な減量を専門家のアドバイスで回避できたし、八重樫は現役最後まですさまじい練習をして、すごい体をつくった。尚弥も一緒にいて感じるものがあったんだと思う。「八重樫さんにお願いできませんか」と尚弥から言ってきたから。自らの体で実践してきたトレーナーだから絶対的な信頼もあった。尚弥が強くならない方がおかしいよね。

大橋会長の選手育成には『ヨネクライズム』が太い針金のように貫かれている。負けを恐れず、強気のマッチーメークで最強を育てる。負けてもチャンスをつくる。大橋会長の恩師、米倉健司会長の指導方針である。川嶋も八重樫も厳しい現実に拳を振り上げて挑んだ。そして、現役時代の大橋会長と同じように、井上は自らイバラの道を求めてきたという。

大橋 トレーナーの父真吾さんと本人が「強いヤツと対戦させてくれ」と望んでくるからね。(WBO世界スーパーフライ級王者)ナルバエスに挑戦が決まった時も、相手はフライ級を16度、スーパーフライ級を11度防衛している名王者だからオレは1回断った。そうしたら真吾さんが「絶対勝てます」と。それから尚弥は強い相手と連続ですよ。それで10年間21連勝だから。ありえないよね。

今年5月6日、井上は90年2月11日の統一世界ヘビー級王者マイク・タイソン(米国)の防衛戦以来34年ぶりに、東京ドームのメインイベントのリングに上がる。34年前のあの日、4日前に初めて世界王座を奪取した大橋会長も観戦に訪れ、リングサイドで「自分もいつかこんな大きな会長で試合をやりますから」と公言した。その果たせなかった夢を愛弟子がついに実現する。

25年目 松本トレーナーの証言

○…川嶋、八重樫を世界王者に育てた松本チーフトレーナーは、横浜高、ヨネクラジムの先輩でもある大橋会長について「周りをその気にさせるカリスマ性が米倉会長との共通点」と語る。その中でも感じるのが「言葉の力」。川嶋の世界挑戦時に「徳山には致命的な欠点がある」と言って陽動したエピソードを挙げ「会長は目の前の結果ではなく、常に先にあるものごとの本質を見ている。だからこそ説得力があるし『会長が言うなら』と選手もスタッフも安心できる」。長男圭佑は日本王座を獲得し、世界挑戦の経験も持つ。大橋ジム25年目の名トレーナーは「30周年も通過点。ファンに応援される選手を育てていきたい」と力を込めた。




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