子どもと大人の口臭の違い/歯学博士照山裕子

「100歳まで食べられる歯と口の話」<44>

大人の口臭は歯周病由来のことが大半です。歯周病菌が増殖する過程で、硫化水素やメチルメルカプタン、ジメチルサルファイド等の毒性の高いガス(VSC=揮発性硫黄化合物)が発生し、強烈なにおいを放ちます。わかりやすく例えるために「生ゴミ、腐ったタマネギ」といった表現をしますが、微量でも不快に感じる特徴があり、コミュニケーションの妨げになる諸悪の根源です。

歯周病の適切な治療を行い、セルフケアが徹底できれば十分改善が可能なので、周りでにおう人がいる場合はまず、歯科医院へ行くことを勧めてください。毒ガスを口の中にため続けると、やがて体内を循環することになります。健康のためにも、口臭は放置せずに退治すべき問題だと考えましょう。

大人と異なり、歯周ポケットが浅い子どもの場合は歯周病が原因ということはほぼありません。しかしながら口呼吸による口の渇きが、口臭を招く原因になっていると考えられています。唾液によって洗い流される自浄作用という働きが落ちてしまうため、細菌が増えやすい環境になるからです。

3~6歳の小児119名を対象に調べた研究では、1日に2回歯を磨いている子どもと、1回以下の子どもではVSC濃度に有意な差はなかったものの、習慣的に口呼吸をしている子どものVSC濃度が高かったという結果が出ています。

幼い子どもの場合は、口の清掃状態よりも生活習慣による口臭に気を付ける必要があります。お子さんの口がぽかんと開いていないか、口唇が乾燥していないかなど、普段の状態をよく観察しておいてください。歯科医院ではトレーニングなどを含めた指導を行っています。

VSC濃度はプラーク(歯垢=しこう)の付着量と相関が認められています。清掃状態が不良であれば歯ぐきが腫れ、歯肉炎やそれに伴う口臭が強くなるケースも見受けられます。思春期は特に、こまめな検診が必要です。