陽気な音楽が鳴り響く、秋の大阪・箕面(みのお)一中グラウンド。体育祭で盛り上がる中、同中3年だった福岡DF亀川諒史(まさし=23)は、1人制服姿のままだった。夏休み中に右足を骨折。足が速くて人気者だった亀川は体育祭で「優勝したい」と誓いながらも走ることができず、応援席の最前列で旗を振り、クラスを鼓舞していた。

 体育祭のメイン企画、クラス対抗のダンスコンテスト。夏休み中、お盆期間には毎日クラスで練習した。骨折していた亀川は当然欠席かと思われていた。だが、教室には毎日松葉づえをつく亀川の姿があった。みんなのダンスを見ながら「サボるな!」と声を掛け、時には松葉づえを器用に扱い、踊りの輪に入った。担任だった鈴木武(たけし)さん(56)が「何事にも真面目で一生懸命。集団を見て自分が何をするべきか判断していた」と褒めたたえるほどだった。

 困難な状況でも自分のできることを精いっぱい探す。そんな自らの熱い心に気付き、亀川は同時期に大きな決断を下した。鈴木さんと母親の3人で臨んだ進路相談。地元の高校に進む予定を急きょ取りやめ、突然「先生、俺プロサッカー選手になりたい。山梨に行きます」と宣言。面食らった鈴木さんから「え?」と聞き返されたが、決意は固まっていた。誘いを受けていた山梨・帝京三高に挑戦することに決めた。

 信念を曲げることなく、前を向いて走り続ける。性格もプレーも同じだ。手倉森ジャパンのサイドバックとして、リオのピッチでも前線へと駆け上がる。【小杉舞】

 ◆亀川諒史(かめかわ・まさし)1993年(平5)5月28日、大阪・箕面市生まれ。小学5年から中学3年までグリーンフルミネンセFCでプレーし、山梨・帝京三高へ進学し、12年に湘南へ入団。福岡へは15年に期限付き移籍で加入し、今季から完全移籍。J1通算35試合1得点。177センチ、68キロ。