ダイヤモンドの原石が発掘された。ヤングボーイズFW久保裕也(22)は山口市立鴻南(こうなん)中2年の時、人生が変わった。08年3月、山口県代表として大分で行われた国体強化合宿に参加していた。京都ユースのスカウトを担当していた高本詞史氏(現J2岐阜GM)が見つめる中、高校生との練習試合でひときわ存在感を放っていた。大雨の中で「体もしっかりしていたし、左右の足で蹴れていた」という。

 「山口にいいFWがいる」と聞きつけた高本氏は遠征先の大分まで駆けつけ、さらに何度も鴻南中も訪れた。中3時には全国大会へ出場したが「ストライカーとしての魅力があり、物おじしない」と、評価は最高ランクだった。

 進路決定が迫られる中3の夏休み。久保は2泊3日で初めて京都ユースの練習に参加した。最終日の練習試合でラスト10分間だけ出場機会があった。与えられた短い時間でも得点に絡む活躍。思わず一緒に出場していたユース選手が「あいつ、うめぇよ。絶対うちが取らなあかん」という声まで上がったという。

 久保の口癖は「本物にならないと」だった。サッカーは海外志向。京都・立命館宇治高時代は、学校の紹介で劇団四季を観劇したり、オーケストラの演奏会にも行った。高3の2月にはザックジャパンに初招集され、現役高校生ながら日本サッカーの頂点も経験した。どんな形でも常に成長できる環境を探してきた。リオでは本物のエースとして君臨し、現在のスイスリーグから次の夢であるセリエA移籍をつかみ取る。【小杉舞】

 ◆久保裕也(くぼ・ゆうや)1993年(平5)12月24日、山口市生まれ。鴻南中から京都ユース入り。立命館宇治高2年の10年に2種登録され、11年4月24日の岡山戦でJ2初出場初得点。12年2月のアイスランド戦でA代表に初招集された。13年6月に移籍したスイス1部ヤングボーイズでは通算90試合21得点。178センチ、72キロ。