<リオ五輪:飛び込み>◇15日

 男子板飛び込み予選が行われ、5度目の五輪出場となる寺内健(36=ミキハウス)は380・85点の20位で、上位18人による準決勝に進めなかった。競技開始直後から強風が舞った。2本目の直前には嵐のような風が吹き荒れてバランスを崩した。回転不足でえび反りになった状態で入水し、18・00点。国際大会で「初めて」という低い得点に終わり、この時点で予選突破は絶望的になった。

 観客席にいた4月の競泳日本選手権を最後に引退した北島康介氏(33)がうめく。「今のはずるいよ。何とかならないの」。審判長の判断で、あまりにも条件が違った場合は、やり直す例もある。馬淵コーチが懸命に訴えたが認められない。この時点で最下位29位。予選突破ラインに42点の大差を付けられた。

 寺内と北島氏とは親友。08年北京大会後の一時引退時に、北島氏から「戻ってこないの」と言われ、復帰を本気で考えた。昨夏の世界選手権で5度目の五輪出場を決めると、北島氏も「本気でトライする気持ちになった」という。4月の選考会で北島氏は落選。その夜、食事を共にすると「一緒に行けずに申し訳ない。同世代として本気で応援する」と夢を託されていた。

 北島氏が声をからして応援する中、寺内は残り4本、すべて70点以上の演技で巻き返した。準決勝は逃したが、予選突破ラインに9・05点まで迫った。「気持ちが切れなかったのは意地。来季は続けたい。可能なら東京も目指したい」。失敗を招いた強風が、現役続行へ気持ちを後押ししていることは間違いない。【田口潤】

 ◆寺内健(てらうち・けん)1980年(昭55)8月7日、兵庫県宝塚市生まれ。1歳で水泳を始め、小5で飛び込みに転向。史上最年少13歳で、94年日本選手権高飛び込み優勝。96年アトランタから08年北京まで4大会連続五輪出場。一時引退も、その後現役復帰。今大会は5度目の五輪。世界選手権は6度出場。01年福岡大会は板で銅。甲子園大大学院修了後、ミズノを経て現在ミキハウス。13年10月に史佳夫人と結婚。170センチ、70キロ。