ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ~

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Mー1ドリーム実現のバッテリィズ 「あほ」のエースを生かすのは寺家

バッテリィズのエース(左)と寺家(2023年5月25日撮影)
バッテリィズのエース(左)と寺家(2023年5月25日撮影)

「ワクワクするバカが現れた。日本を明るくしてくれそう」とは、昨年12月22日に開催されたM-1グランプリ決勝で審査員・若林正恭(オードリー)がつぶやいた言葉。もちろん、準優勝したバッテリィズを評してのコメントだ。

世界遺産のピラミッドやタージマハルを説明する寺家(じけ)に対し「なんで他人の墓参りに行かなあかんねん?」と素直すぎるエースの言葉。「生きるのに意味なんかいらんねん!」という漫才中のセリフは、おおいに話題を呼んだ。

優勝こそ令和ロマンに譲ったものの、上方漫才の伝統とも言える「あほ」を前面に押し出したスタイルは、初見のファンには衝撃でもあったようだ。もっとも、関西のお笑い好きにとっては「ようやくバッテリィズの面白さに気づいたか」ではあるが。

M-1の威力は、やはり大きい。年末年始のテレビを見ていると、バッテリィズが出まくっていた。彼らが出演する劇場のチケットも、いくつか完売の勢い。1カ月前とは、明らかに世界が変わった(同じM-1決勝に出たジョックロックは配信チケットがバカ売れし、本人たちもびっくりしている)。

1年前、2年前からバッテリィズに注目していた記者からすれば、このブレークは正直うれしい。大阪・道頓堀の小さな劇場で、30人ほどの観客を前に仲の良い豪快キャプテン、イチオクとともに漫才していた姿が懐かしくもある。

エースのあほっぷりばかりが注目されているが、相方でネタを書いている寺家について、ここではふれたい。

コンビ名が表すように、2人は芸人の草野球チームで投手と捕手。ともに相当な野球好きなのは同じだが、野球少年がそのまま大人になったようなエースとは対照的に、寺家は「考える野球」を好む。

「次の1球を何にするか、試合状況とバッターの頭の中を読み、ベストの配球を考えるのが好きなんです」とは一昨年5月、日刊スポーツのインタビューに答えた寺家のコメント。

キャッチャーとして必要なインサイドワークこそが寺家の持ち味。だから「高校野球の監督にはあこがれます」と話した。

縁の下の力持ち。そんな言葉がよく似合う。エースの魅力を最大限に引き出し、バッテリィズの漫才をリードする男。舞台では喜怒哀楽をダイナミックに見せるエースとは逆に、寺家はポーカーフェース。それも笑いを誘うための戦略なのだろう。

月亭八方が「アホの坂田以来」と絶賛するエースは、吉本興業の宝。ただ、その男を生かすも殺すも寺家の采配次第。バッテリィズのカギを握るのは寺家なのだ。【三宅敏】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)

 ◆村上久美子(むらかみ・くみこ) 大阪(泉州)生まれ。91年入社。関西の芸能社会を中心に取材。吉本興業、宝塚歌劇、短期間ながら阪神タイガースと、関西発の3大ホットコーナーをはじめ、NMB48まで、取材歴は20年以上。

 ◆松浦隆司(まつうら・たかし) 大阪生まれ。92年入社。関西を中心にスポーツ紙の社会面担当としてエロから政治まで、ダークサイドも含め取材歴は20年以上。和歌山毒物カレー事件、橋下徹前大阪市長は茶髪弁護士時代から取材。

 ◆三宅敏(みやけ・さとし) 大阪市生まれ。1981年に日刊スポーツ入社。主に芸能ニュース、社会ニュースの記者・デスクを務める。11年に早期退職制度で退社。その後は遊んで暮らしていたが、22年から記者として復帰。演芸(お笑い)を中心に取材。好きなものは猫、サッカー、麻雀、ゴルフ。身長171センチ。

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