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- 自民党本部(2021年撮影)
今の永田町は、さきの衆院選で大躍進した国民民主党が、話題の中心になっている。衆院選で議席が4倍増の28議席と大躍進したことで存在感が増している中で、その組織のトップを務めて「時の人」となっていたのに、まさかの不倫報道で窮地に追い込まれている玉木雄一郎代表の立場は、くすぶる進退論を含めてこれからどうなるのか、まだまだ見通せない状況だ。
最近に限っていえば、女性問題を報じられた国会議員は、就いていた役職を辞任したり、議員辞職に追い込まれたりしているケースがほとんどだ。衆院選で「手取りを増やす」ためとして訴え、躍進のベースにもなった「年収103万円の壁」引き上げについて、自民党が少数与党に落ち込んだことで政府の政策に反映させられるかもしれない局面でもあることから、実現への執念もあって「今は辞めるに辞められない状況なのではないか」(野党関係者)との見方もある。
毎週火曜日に行われている玉木氏の定例会見だが、不倫報道直後の12日は、報道に関する追及が続いた。今回の報道の展開や玉木氏の動向次第では、尾を引きそうな空気感は消えていない。
玉木氏の問題や国民民主党の動向に関心が集まっていたこともあり、あまり大きな話題にはならなかったが、永田町の中では関心を集めていた選挙の結果が明らかになった。玉木氏の不倫報道と同じ日に結果が発表されたため一般的にはほとんど話題にならなかったが、今月3日に告示された東京都荒川区の区長選で、自民、公明の推薦候補が、無所属の新人候補に約3200票の差をつけられ敗れていた。
自民党は、衆院選で56議席減と大敗した直後。今回の荒川区長選は5期20年務めた西川太一郎氏の退任に伴うもので、自公、共産各党の推薦候補に加え、地域政党「都民ファーストの会」元東京都議の滝口学氏による三つどもえの戦いになったが、無所属で戦った滝口氏が勝利する形となった。
自民党は裏金問題が表面化する前の昨年9月ごろから、全国の自治体選挙、特に東京では首長選挙や衆議院の補選などで敗北が続いた。小池百合子氏が3選された7月の東京都知事選でも、党が関わった候補者擁立を見送った。区長選でいえば、今年6月の港区長選でも無所属新人の清家愛氏が、自公推薦の現職らを破っている。
今回の荒川区長選は衆院選直後の選挙という環境ではあったが、反転攻勢に向けたチャンスでもあった。それだけに、推薦候補の敗北が伝えられ、自民党関係者からは「やっぱり負けたか…」という声も聞いた。
自民党は、衆院選で東京に30ある小選挙区で11議席、裏金問題で非公認となった2人を含めても13議席しか獲得できなかった。立憲民主党が半数の15議席を獲得している。衆院選で示された自民党への有権者の厳しい視線はまだ回復していないのが現実のようだ。
東京では、荒川区長選の投票が行われた8日に、東京都議の補欠選挙(武蔵野市選挙区、被選挙数1)も告示され、今日17日に投開票が予定されている。立民公認候補と自民公認候補が一騎打ちとなっており、与野党対決ということもあって、再びその結果に関心が集まっている。
玉木氏の問題が表面化し、国民民主党の「103万円の壁」が大きな関心を集めるだけでなく、少数与党に転落した自民党への野党の攻勢が目立つ永田町。「自民1強」だった国会の景色が激変している一方で、「選挙に勝てない自民党」の景色が変わっていくタイミングは、訪れるのだろうか。【中山知子】(ニッカンスポーツ・コム/社会コラム「取材備忘録」)