第5回スイス大会
ハンガリーとブラジルの流血戦
平和の国・スイスが血に染まった。準々決勝で実現した優勝候補同士の対戦。ハンガリー-ブラジル戦はのちに「ベルンの戦闘」と語り継がれる大乱戦となった。
土砂降りの中で行われた試合は、開始3分と8分にハンガリーが得点し、主導権を握った。水たまりができた最悪のピッチ状況で、本来のテクニック、パス回しが駆使できなかったブラジルは徐々にイライラを募らせた。ようやくPKで1点を返して前半は1点差で折り返した。
3-2でハンガリーのリードで迎えた後半27分、ピッチ上で乱闘が起きた。パンチの応酬で両チーム1人ずつ退場になった。同41分にはブラジルMFウンベルトがラフプレーで退場になった。試合はハンガリーが終了間際に1点を加えて4-2の勝利で幕を閉じた。しかし乱闘はさらにヒートアップした。
試合後、ハンガリーのロッカールームにブラジル選手が乱入した。一瞬にしてスパイクや飲料水のびんが飛び交う修羅場となった。ハンガリーのセベシュ監督がほおを切り、複数の選手が血を流し、うずくまった。やられたらやり返す。足首を痛めてスタンド観戦したはずのプスカシュ主将が、びんを持ってロッカールームにいたことが複数の関係者に目撃された。頭を約8センチ切ったブラジルのピニェイロに攻撃を加えたとの証言もある。
しかし自国選手にペナルティーが課せられることを強硬に反対した両サッカー協会の「陰の力」で結局、乱闘による両チームの処分はなかった。