第6回スウェーデン大会
もう1人の伝説フォンテーヌ
スウェーデン大会で「伝説」となったのは、17歳のFWペレだけではなかった。当時23歳のフランス代表FWフォンテーヌ。初戦パラグアイ戦でのハットトリックを皮切りに、1次リーグ3試合で6得点を決めた。
勢いは止まらない。準々決勝で北アイルランドから2点、敗れはしたが準決勝ブラジル戦1点、3位決定戦の西ドイツ戦でも4点で有終の美を飾り全6試合で13得点。不滅の大記録を樹立した。
最優秀選手に選ばれたコパ、パンサンと世界屈指の攻撃陣をそろえたフランスは計23得点を量産したが、フォンテーヌはそれまで代表戦わずか2試合の控えだった。主力選手の故障による代役で、前回54年スイス大会でコチシュ(ハンガリー)が記録した大会最多得点記録を2点上回り得点王を獲得。相次ぐ故障で現役を29歳で終え、その後は2度とW杯の舞台に立てなかったが、通算最多得点も2大会で14得点をマークしたミュラー(ドイツ)に次いで2位。現役最多で3大会通算12得点のロナウド(ブラジル=3位タイ)と比較しても、そのすごさが分かる。
華やかなスター選手の活躍に沸く一方で、追悼の意を込めた大会でもあった。開幕4カ月前の2月6日、ミュンヘン空港で旅客機が離陸に失敗し墜落。欧州チャンピオンズ杯(現リーグ)からの帰路で乗り合わせていたマンチェスターUの8選手が尊い命を散らせた。心の傷が癒えないままW杯に臨んだイングランド代表は1次リーグで姿を消したが、優勝したブラジルを無失点に抑えるなど負けなしの3分けと健闘。歓喜と悲しみ、多くの涙が歴史に刻み込まれた。