第9回メキシコ大会
ブラジルのための22日間、12戦全勝V
1970年の第9回メキシコ大会は、まさにブラジルのための22日間だった。南米予選の6試合を含め、本大会決勝までの12戦を全勝。しかも、引き分けも延長もない「完全無欠」の優勝だった。
過去にもその後も、同じようなVロードを歩んだ国はない。58、62年大会に続く3度目の優勝で、ジュール・リメ杯の永久保持権も獲得した。
話はそれるが、ブラジルに持ち帰られたそのジュール・リメ杯は、2年後に何者かに盗まれてしまい、いまだに発見されていない。74年の西ドイツ大会からは地球をかたどった新しい「FIFAワールドカップ」が表彰式で手渡され、優勝国はそのレプリカを持ち帰るというシステムに変わっている。
70年大会のブラジルに戻る。当時の世界の主流は、前回66年大会で地元優勝したイングランドに代表されるように、教科書通りの「堅くて無駄のない」サッカーだった。だが、ブラジルはそんなムードを一掃する「楽しく攻撃的な」サッカーをこの大会で体現した。以前、日本代表ジーコ監督も「監督として理想のチームは、1970年のブラジル代表」と母国の先輩たちに最大級の敬意を表していた。「サッカーは楽しいものなんだ」ということを再確認させてくれたのが、この大会のブラジルだった。
DFカルロス・アルベルト、ピアザ、MFジェルソン、リベリーノ、ジャイルジーニョ、FWトスタン...。どの選手も創造性に富み、予想外の動きと抜群の運動能力で見る者をワクワクさせた。そしてもちろん、その中心にいたのが神様ペレだった。