第10回西ドイツ大会
リベリーノの魔法も王国連覇失敗
W杯では58年スウェーデンと62年チリ大会を制したブラジルを最後に、連覇したチームはない。全17回の歴史でも、34年イタリアと38年フランス大会のイタリアと2チームだけだ。3連覇は1度もない。4年に1度のW杯で続けて勝つことは、それほど難しい。
70年メキシコ大会王者のブラジルも、74年大会の頂に立つことに失敗した。今大会から前回優勝チームが開幕戦に登場することになった。ユーゴスラビア相手のブラジルの開幕戦は0-0引き分け。ちなみに02年日韓大会までの前回優勝チームの開幕戦成績は2勝3分け3敗。連覇への重圧が数字にも表れている。第2戦スコットランド戦もスコアレスドロー。神様ペレ、網膜剥離(はくり)から復活したトスタン、至高の左足を持つジェルソン...。70年大会の優勝メンバーが故障などでそろわず、カナリア軍団はゴールを奏でる方法を忘れてしまった。
かろうじて2次リーグに進み王国のプライドも見せた。第1戦東ドイツ戦で「左足の魔術師」と呼ばれたリベリーノが魔法のFKを決めた。相手がつくった壁の間に1人入った味方FWが、身をかがめた後にできた30センチのすき間にボールを通すマジック弾だった。続くアルゼンチン戦では、W杯史上初めて実現した南米のライバルとの対決を2-1と制した。
だが、第3戦は新進気鋭のオランダに0-2完敗。3位決定戦ポーランド戦でもラトーに得点王を決定づけるゴールを許して敗れた。前回称賛を浴びたザガロ監督だが、94年米国大会で技術顧問として自身4度目の優勝を果たすまで、雌伏して時を待つことになった。