第13回メキシコ大会
痛恨のPK失敗、神に見放された神様
ペレが3度のW杯優勝の栄光に輝いているのに対して、ジーコは1度もない。前回の82年スペイン大会ではブラジルの黄金の中盤のエースとして優勝候補筆頭だったが、イタリアのロッシに優勝をさらわれてしまった。そして86年は、左ひざに故障を抱え万全ではなかった。
ジーコ同様W杯に縁がなかったのが一方の雄、フランスのプラティニだった。ヨーロッパではチャンピオンになっているが、W杯では82年大会で西ドイツに準決勝で敗れている。86年は30歳。やや峠を越してはいるが、最後の大会で優勝の可能性はあった。
ジーコのブラジルとプラティニのフランスは、1次リーグで別の組だった。互いに1位になれば、夢の対決は決勝で実現するはずだった。しかし、神様はせっかちだったのか? 決勝まで待てず、アルゼンチン-イングランド戦同様に準々決勝で2人を激突させてしまった。場所はグアダラハラ。メキシコシティから飛行機で1時間ちょい。
プラティニは先発出場して同点ゴールを決めたが、ジーコは途中出場だった。1対1のこう着した場面でピッチに登場したジーコは早速、自らPKを得た。時間から考え、決めればブラジルの勝ち。ジーコはW杯獲得の可能性に大きく近づく。しかし、ゴールを決められなかった。延長戦に突入した。決着つかずにPK戦。ジーコは決めたが、プラティニは外した。それでもフランスは勝ち上がった。準々決勝4試合のうち「神の助け」を借りたアルゼンチン以外の3試合は、いずれもPK戦だった。【86年大会取材・黒木博一】