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第14回イタリア大会

夢をみるため貨物船でやって来た


 「カ・メ・ルーン、カ・メ・ルーン」。ミラノのサンシーロスタジアムの周辺には、歌いながら踊るサポーターの集団があった。

 前回大会優勝国が登場する開幕戦、カメルーンはマラドーナのアルゼンチンに1-0で勝った。超人的な跳躍を見せたFWオマン・ビイクのヘディングシュート。歴史的な勝利に、サポーターは大騒ぎだった。

 「どうだ、強いだろ。カメルーンは優勝するよ」。サポーターの1人が日本語で言った。「なぜ日本語が話せるの?」と聞くと「だって、日本行きの船に乗っていたからね」。貨物船が彼の仕事場だった。日本への船は稼ぎがいいらしい。もちろん、イタリアにも船で来た。「こっちに来る船を探して、それに乗るんだよ。そうすれば、お金をかけずにW杯に来られる」。サポーターはたくましい。

 ローマのレストランで注文を取りにきたのは、米国人青年だった。「W杯のためにイタリアまで来たけれど、1カ月間は金が続かない。だから、働きながらW杯を見るんだ」という。レストランの主人は「サッカーを見に来てると言われりゃあ、助けねえわけにはいかねえ。だから、働いてもらってるんでえ」。英語圏の観光客もたくさん来るから、一石二鳥だという。

 観戦ツアーに乗って試合を見るのもいい。ホテルやチケットなどの心配もいらない(問題になったこともあったけれど)。しかし、世界中の多くのサポーターは工夫して、あの手この手で好きなW杯を目指す。移動は安い列車を利用し、泊まるのは駅。どんな苦労をしても、W杯を見に行く。

 チケットの高騰などで、W杯が少しずつ一般から遠いものになっていく。それでも、世界の頂点を決める大会への思いは強い。「何を犠牲にしても、我らの代表チームを応援したい」という気持ちは万国共通だ。【90年大会取材・荻島弘一】

















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