第15回米国大会
「不毛の地」でも観客新記録
禁止薬物使用で追放されたマラドーナを失った94年大会のV候補アルゼンチンは、西海岸ロサンゼルスで行われた決勝トーナメント1回戦でルーマニアに敗れた。
その後、チームはキャンプを張った東海岸のボストンへ移動。2泊3日でショッピングなどを楽しんだ。4試合にフル出場したMFシメオネ、3試合に出場したFWオルテガらは市内でイタリア料理を満喫。日本や欧州なら人気選手の登場に大騒ぎになるところだが、そこは「サッカー不毛の地」とか「移民の国」ともいわれる米国。ほとんど気づく人はいなかった。
NFL、NBA、MLB、NHLにゴルフを加えた5大スポーツへの関心が高い米国だが、サッカーへの興味はさほど高いとはいえなかった。それでもお祭り、イベント好きなお国柄もあり、普段はアメフトが行われる競技場に大観衆が集まり、観客動員で新記録を打ち立てた。決勝が行われたロサンゼルスのローズボウルでは、試合開始前に人気絶頂の歌手ホイットニー・ヒューストンがコンサート。上空では曲芸飛行が披露され、派手に花火も鳴った。
大会組織委員会のローゼンバーグ委員長は時差3時間、約4000キロ離れた東海岸から西海岸の往復もしばしば。ヘリコプターで移動してダブルヘッダーで試合を観戦するなど「飛行機の中が私のベッドだったよ」と自身の過酷さをも「ショー」の一部にしてしまった。それでいて、開幕を控えていたMLSのアピールも決して忘れることはなかった。【94年大会取材・岡本学】