第17回日韓大会
第3勢力の象徴トルコ
日本代表の夢をベスト16で断ったトルコは「第3勢力の大会」といわれた02年W杯の象徴だった。
決勝トーナメント1回戦で日本を1-0で破り、準々決勝は台風の目セネガルをゴールデンゴールで下す。この決勝点を決めたのは、後に神戸入りしたFWイルハン・マンスズだった。
スーパーサブだったイルハンは後半途中から出場。黒髪の長髪を天辺で束ねた「ちょんまげ」スタイルでピッチを駆け回り0-0で突入した延長戦でゴール。アジアの香り漂う甘いマスクに日本女性のハートは射抜かれた。日本でも女性誌やワイドショーでも取り上げられ、遠い存在のイングランド代表ベッカムより、どこか親しみやすい「恋人」気分になれるイルハンを支持する女性ファンの間でブームに火はついた。
準決勝ではブラジルに屈したが、韓国での3位決定戦ではホスト国を撃破。初先発したイルハンは、エースFWハカンのW杯史上最速11秒弾を演出すると自らも2ゴールする活躍だった。日本、韓国を完全アウエーで連破しての世界3位。欧州共同体構想(現EU)から除外され、欧州サッカー連盟に加わったのも8年遅れと、経済とサッカーで欧州から仲間外れにされたトルコ国民のうっぷんを晴らす快挙だった。
W杯が生んだアイドルは1年半後、Jリーグのピッチに立った。総額9億円を投じて獲得した神戸の救世主と期待されたが、右ひざに古傷を抱え、リハビリの日々...。最後は無断帰国で解雇されたわがまま王子様が、W杯の輝きを放つことはなかった。【02年大会取材・西尾雅治】