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第19回南アフリカ大会

イニエスタ決勝弾でスペイン悲願の初V


 【ヨハネスブルク(南アフリカ)7月11日(日本時間12日)=佐藤隆志】スペインがオランダとの死闘を制し、悲願のW杯初優勝を遂げた。延長後半11分、MFアンドレス・イニエスタ(26=バルセロナ)が右足のボレーシュートで1-0と競り勝った。Rマドリード、バルセロナの世界屈指のクラブを抱えながら、これまでW杯のトロフィーとは縁がなかったが、スペインサッカー「申し子」の一撃で、13度目の出場で史上8チーム目の栄冠を手にした。これで08年の欧州選手権に続くビッグタイトルの獲得。ボールを支配する華麗なパスサッカーで、スペインが新時代の到来を高らかに告げた。

 イニエスタの情熱が、死闘にピリオドを打った。延長後半11分、一瞬のチャンスを逃さなかった。オフサイドラインぎりぎりで、MFセスクからのパスを受けた。的確なコントロールでボールを前に浮かせると、ワンバウンドしたところを右足で打ち抜いた。オランダGKステケレンブルフの右手をはじき、鋭い弾道がゴールネットを揺すった。

 もの静かな男がユニホームを脱ぎ、白のアンダーシャツ姿となった。胸には「ダニ・ハルケ、いつも自分たちと一緒だ」のメッセージ。昨年8月、合宿中に突然死したバルセロナ下部チーム時代の親友にささげるゴール―。スペイン「悲願」の思いが、にじんだ。ピッチの選手だけでなく、ベンチの仲間までイニエスタに覆いかぶさる。スペインは民族間の独立心が旺盛だが、マドリードもカタルーニャもバスクもなかった。

 試合終了のホイッスルに、イニエスタはピッチにひざまずき、両手を上げてガッツポーズ。そのまま後方へ倒れ込んだ。1934年の初参加から、77年越しでつかんだ悲願のタイトル。多彩なテクニックでスペインサッカーの「申し子」とも呼ばれる男が、母国に長年の夢をもたらした。

 イニエスタ みんなでつかんだチャンピオンだ。まだ、自分たちが実現したことの実感はない。優勝の喜びがこれまでとは思わなかった。信じられない。

 187センチと大柄で、強靱(きょうじん)な肉体を誇るオランダMFファンボメルのハードマークに遭った。170センチと小柄ながら、名門バルセロナで培った技術と判断力で対抗した。最後は「6番」の攻防が、大一番の明暗を分けた。マンオブザマッチに輝いた男は涙目ながら「ゴールの瞬間、家族、スペイン、そしてハルケのことを思い出した。これまでハルケに思いをささげることができずにいた。これが一番のものになった」と付け加えた。

 欧州選手権に続くビッグタイトル獲得は、スペイン時代の到来を告げるものとなった。イニエスタ、シャビ、ペドロ、ビリャら小柄な攻撃陣が、多彩なパスワークを武器に攻め立てる。大柄でパワーあふれるチームが優勢な時代にあって、ドイツ、オランダを破っての戴冠。チームとしての技術、戦術眼を主眼にした手法は特別な輝きを放った。イニエスタは「自分たちはスペクタクルな仕事をし、世界を制した」と言う。

 初のアフリカ開催という歴史的なW杯で、スペインが新たな伝説になった。【佐藤隆志】

<スペイン記録的優勝アラカルト>

 ◆最少得点&最少失点V 今大会7試合8得点2失点で優勝。8得点での優勝は、38年イタリア、66年イングランド、94年ブラジルの11得点を下回る最少得点。2失点優勝も98年フランス、06年イタリアと並ぶ最少失点。

 ◆史上初の4試合連続1-0完封 決勝トーナメント(T)の4試合すべて最少得点で勝利。02年のドイツがマークした3試合連続1-0勝利を更新する「連続最少得点勝利記録」。決勝T全4試合無失点での優勝も初。

 ◆史上初の黒星発進V 1次リーグ初戦のスイス戦で敗れた。敗戦を喫ながらも優勝したのは、54年と74年西ドイツ、78年アルゼンチンに続き4チーム目だが、過去3チームはいずれも2戦目以降の敗戦。黒星発進での優勝は初。

 ◆ジンクス打破 08年の欧州王者として「欧州王者はW杯で優勝できない」というジンクスを打ち破った。過去の欧州王者で2年後のW杯も制したのは、74年自国開催の西ドイツだけだった。36年ぶり2チーム目の「連覇」となった。

















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