舞台雑話

紀伊國屋演劇賞授賞の緒方晋は異色の存在、見事な演技力に関係者の間で評判が駆け抜けました

1966年に創設された紀伊國屋演劇賞の2024年の受賞者が先日発表されました。数ある演劇賞の中でも、最も伝統があり、今回で59回目です。大賞は新宿梁山泊、個人賞は俳優の岩崎加根子、緒方晋、岡本圭人、那須凜、劇作家の横山拓也が受賞しました。岩崎は俳優座の代表で92歳の大ベテラン。岡本はアイドルグループ「Hey!Say!JUMP」の元メンバーで、米国での演劇留学を経てグループを脱退し、今はソロの俳優として活躍しています。那須も青年座に所属しながら、外部出演も多い若手の注目株。横山は昨年の鶴屋南北戯曲賞を受賞した実力派の劇作家です。

その中で異色の存在が緒方と言えるでしょう。52歳の中堅俳優ですが、今年6月に劇団チョコレートケーキ公演「白き山」に病気で降板した村井国夫の代役で主演するまで、緒方のことを認識することはありませんでした。しかし、歌人として知られる斎藤茂吉を演じ、その見事な演技力に目を見張りました。直後、演劇をよく見ている関係者の間で「緒方っていいね」という評判が駆け抜けました。でも、それは我々の勉強不足でした。もともと大阪で演劇活動を始め、劇団を結成していましたが、最近は東京での活動が中心となり、私が見ている舞台にも緒方は出演していました。ただ、その時は脇役だったため、きちんと「緒方晋」として認識していなかったのです。おのれの不明を恥じるばかりです。11月には晩年の茂吉を演じた「つきかげ」が上演されましたが、「白き山」「つきかげ」の演技で受賞したのは、当然の結果です。演劇界には陽の目を見ない、埋もれた存在がまだまだいるのでしょう。【林尚之】

華やかな舞台、輝く役者。夢の世界であると同時に、そこには舞台裏とさまざまな人間模様もあります。演劇、演芸について、林尚之記者がさまざまな切り口から伝えます。あなたも、演劇の世界がきっと好きになります。

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