背中を強く押してくれる/くすぶりの狂騒曲(日)
14年7月に「大宮ラクーンよしもと劇場」がオープンしたのを機に、同10月に東京の劇場でくすぶり続けた芸人によって結成されたユニット「大宮セブン」の実話を映画化した。マヂカルラブリー、GAGと初期から名を連ねながら、最もくすぶった「タモンズ」がラストイヤーのM-1グランプリに挑む苦闘と葛藤を描く。
結成当時、大宮セブンは“島流し”とやゆされようが、とがった笑いを自ら面白がって劇場で展開も、観客が連日0の状態が続いた。そんな日々を描く群像劇は、苦しくもエネルギーと野心に満ちあふれている。その後、各グループが賞レースで上位に食い込む中、くすぶり続けるタモンズに焦点が当たると、自らを見失わないようにと振り絞る気持ち…2人でお笑いをすることが楽しいという、原点に返ろうとする思いがスクリーンからあふれ出す。
諦めない人、諦められない人、諦めてしまった人…夢と現実の境目でもがく芸人の姿は寒さが増す中、世の世知辛さを嫌というほど感じる人の背中を強く押すだろう。お笑い好き以外、目に留まりにくいかも知れないが観客の心の中で自分たちの物語へと、きっと変わっていく1本だ。その力を与えているのは、タモンズの大波康平を演じた主演の和田正人と安部浩章を演じた駒木根隆介をはじめ、辻凪子、岡田義徳ら芝居巧者の好演だ。永瀬未留が演じるファンの月瀬琉瑠が「タモンズは面白いです!」と叫ぶシーンは胸の奥に刺さること、間違いない。【村上幸将】
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