映画この一本

新人作家、のん痛快/私にふさわしいホテル(日)

(C)2012柚木麻子/新潮社(C)2024「私にふさわしいホテル」製作委員会
(C)2012柚木麻子/新潮社(C)2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

女優、アーティストとして多彩な活動をする、のんが遺憾なくコメディエンヌぶりを発揮している。主人公が逆境に立ち向かい、自ら人生を切り開いていくパワフルさは、のんの全方位で全力投球する姿勢とも、どこか重なる。

のんが演じるのは、権威としがらみだらけの文学界であの手この手を使い、成り上がっていく新人作家の中島加代子。新人賞を受賞したものの、大作家、東十条宗典(滝藤賢一)に作品を酷評されたことが原因で、不遇の日々を過ごす。

いつかこのホテルにふさわしい作家になりたい-。名だたる作家に愛された「山の上ホテル」に自腹で宿泊すると、偶然にも上階で東十条が執筆していたことを知り、奇想天外な作戦を思い立つ。加代子と東十条の大人げない掛け合いは笑いどころが満載だ。主人公の不公平な世の中への毒づき、権力者でも容赦しない態度は痛快だ。

奇才、堤幸彦監督が柚木麻子氏の同名小説を映画化。のんの出世作「あまちゃん」の盟友、橋本愛もカリスマ書店員役で出演する。文壇の内幕を描く話なのに、のんの突き抜けた演技がカラッとした笑いの世界へ誘う。【松浦隆司】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)

洋邦問わず、日刊スポーツの映画担当記者がオススメ映画を紹介します。

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