櫻坂46の楽曲は胸の内にスッと入る アニバーサリーライブで刺さった「最終の地下鉄に乗って」
<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>
11月23日、24日に千葉・ZOZOマリンスタジアムで行われた、櫻坂46の「4th YEAR ANNIVERSARY LIVE」を取材する機会に恵まれた。メンバーとBuddies(ファンの総称)が一体となって作り上げた世界観を目の当たりにした。
24日の公演で披露した「静寂の暴力」では、この日訪れた約3万6000人が一気にペンライトを消灯し、沈黙。スタジアムに張り詰めたような静けさと暗闇が広がり、メンバーとファンがともに楽曲の世界に没入する。中嶋優月(21)はMCで「皆さんの前で披露することで、楽曲に色が付いていくのを実感しています。こうやってBuddiesとみんなでライブを作っていくんだなって」と笑顔で話した。
近年は制御型ペンライト(無線操作でライトを一斉制御するもの)を導入するライブも多く、ペンライトカラーもパフォーマンスを彩る大きな要素となっている。櫻坂46のライブは制御型ペンライトを導入しておらず、おのおのが自由なペンライトカラーで楽しむことが前提にある。そのうえで、楽曲によっては多数のファンがカラーをそろえる場面もあり、スタジアム一面に同色の光の海が広がる光景は圧巻だった。
本公演で個人的に心に残った楽曲が「最終の地下鉄に乗って」。生きづらさや人生への諦めを朗らかなメロディーに乗せて歌った楽曲で、曲中ではメンバーがトロッコからサインボールを投げながら会場を周回。温かな黄色のペンライトカラーで染まった会場とメンバーの笑顔、切なく哀愁漂う歌詞のコントラストが胸に刺さり、こみ上げるものがあった。
櫻坂46の楽曲、パフォーマンスは独自の世界観を持っている。時にクールに、時にはかなく、時にダークなダンスパフォーマンスに卓越した表現力。いち個人の感想ではあるが、綿密に練られたハイクオリティー世界観に圧倒されつつ「なんか分かるなあ」と胸の内にスッと入ってくる、共感できる楽曲が多いと感じる。
同公演でライブ初披露した新曲「I want tomorrow to come」でセンターを務めた山下瞳月(19)は「私自身も『明日が来てほしくないな』って日もあって、きっとここに来てくださっている皆さんもそういう日が1度はあったのではないかと思います」と涙。「そういう日に私はこの曲を聞いて心が救われたし、皆さんにとってもそうであったらうれしいです」と語った。
メンバーもファンも、さまざまな思いを抱えながら日々を過ごしている。作品の世界観に自身の人生を重ね、共感することから生まれる強固な一体感が、櫻坂46とBuddiesの間にあるのではないだろうか。【玉利朱音】