【J1昇格PO】仙台がリーグ戦6位からの下克上に王手 山形3失点完敗、MF気田亮真は悔し涙
<J1昇格プレーオフ>◇1日◇準決勝◇各地
J2ベガルタ仙台が、リーグ戦6位からの下克上に王手をかけた。
アウェーで3位長崎と対戦。FW中島元彦(25)が前半31分にPKで先制ゴールを決めると、試合終了間際にはカウンターからこの日2得点目でとどめを刺した。4位山形は0-3で5位岡山にホームで完敗。移籍1年目のMF気田亮真(27)は悔し涙を流した。仙台は4季ぶりのJ1復帰を目指し、7日に岡山に乗り込む。
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中島が、ゴール中央目がけて右足を振り抜いた。前半31分のPK。「真ん中に蹴る決意を持って。そこしか見えてなかったです」。ゴールネットを揺らすと、ユアテックスタジアム仙台から約1600キロ離れたピーススタジアムまでかけつけた2000人のベガルタゴールドが弾んだ。
活気づいた仙台は、後半にも3得点。最後は同47分、中島がDF石尾陸登(23)のクロスを足元に収め、冷静に右足でゴール中央へ流し込んだ。中島は「非常にうれしい勝ち。あと1つ残っているので、油断せずに練習から頑張っていきたいです」と勝ってかぶとの緒を締めた。
レギュラーシーズンでは一度もなかった4得点での勝利に、森山佳郎監督(57)は「ここでまさかの4得点。この3週間ためてきた爆発力が出た試合だったかな」と選手たちをたたえた。シュートは長崎の8本に対し、16本。怒濤(どとう)の攻撃で攻め立てた。
同スタジアムで3戦で13得点を挙げている長崎に、わずか1失点で耐えたのも大きい。指揮官は「体張って、2度も3度も連続してディフェンスをやってくれた」。プレーオフだからといって特別なことをせず、3週間で質と強度を上げてきた成果だった。
決勝は7日。またしてもアウェーだが、指揮官が「全員が塊になって戦って行けば勝利も夢じゃない」と目を見開くと、中島も「もうオフシーズンに入ってる選手、いろんな選手がいますが、まだこうやってサッカーできる喜びをかみしめながらピッチに立ちました。失うものはない。勝ちしか許されない場面で全員が戦っていました。また練習から競争して、最後の一戦に臨みたいと思います」と力を込めた。たぎる視線の先に見据えるのは、4季ぶりのJ1舞台-。下克上は、昇格で成る。
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移籍1年目は涙の幕切れとなった。モンテディオ山形の気田は後半から出場。2点を追いかける同9分にはDF川井が退場となり、数的不利も負った。だが、冷静だった。「僕が出るときは恐らく負けている状況になるとイメージしていたので、そうなると点が欲しい展開。余計なことは考えずに縦に仕掛けることだけを意識しました」。右サイドを突破し、ゴール前に果敢にクロスを上げるなど、攻撃の起点を担った。それでも、得点は遠かった。
気田にとっては9月7日大分戦以来、約3カ月ぶりのピッチだった。9月初めに右足首の捻挫に見舞われ、プロ生活最長となる約2カ月間も離脱した。その間、チームは9連勝と絶好調だったため、復帰後もメンバー外。「自分の存在意義や自信をなくしかけた部分はありました」。それでも原動力となったのはこの舞台だった。「最後にプレーオフの舞台で輝くために逆算して、1日もサボることなく自分のできることを毎日、全力で努力を積み重ねてきました」。
待ちに待ったチャンスだったが、ものにすることはできなかった。今季終了を告げるホイッスル同時にピッチに座り込み、倒れた。涙が、あふれでた。「結果的に何もできなかったふがいなさが表れました」。
ライバルの仙台から移籍し、エースナンバーともいわれる「10」を背負った。「(プレッシャーは)0ではなかったですが、そのプレッシャーをはねのけられなかったです」と、静かに語った。チームとしても、気田としても、ここからリスタートとなる。この悔しさを胸に刻み、来季こそは必ずJ1昇格を成し遂げる。【木村有優】
【J1昇格プレーオフ】6位仙台が3位長崎に4発大勝、5位岡山が4位山形に3発快勝/詳細