青木宣親2730安打目で思い出す「らしいフィナーレ」の面々/物語のあるデータ

現役最後の打席は二塁打で締めました。今季限りの引退を表明していたヤクルト青木宣親外野手(42)が10月2日、広島戦(神宮)に出場し、2安打を放ちました。日米通算2730安打。「安打製造機」と呼ばれた男らしい姿を、最後の最後まで貫きました。「らしいフィナーレ」でいえば、大洋(現DeNA)の田代富雄を思い出します。通算278本のホームラン打者は、最後のひと振りが満塁本塁打になってファンに別れを告げました。

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■全員「23」の前で二塁打締め

広島投手陣はユニホームを脱ぐ青木に敬意を表し、小細工せずぶつかった。真っすぐ一本勝負。今季は2割超えがやっとの打者だったが、さすがに真っすぐだけでは抑えきれない。

6回2死無走者。広島九里亜蓮の投じた2球目を捉えた打球は、ライナーとなって右翼線を襲った。一気に二塁に達すると、背番号23のボードが揺れるスタンドに頭を下げた。2回には床田寛樹から左前に流し打ち、4打数2安打。通算安打を2730本にまで伸ばした。

青木が引退会見を行った席で涙した村上宗隆が、改めて大先輩をたたえた。「いや、さすがやなと思って見ていました」。この日は、ナイン全員が23番を背負って青木のラストゲームに臨んでいた。

「ついにこのときがやってきました」。

日米計2483試合を戦い抜き、迎えたフィナーレ。その最後を青木らしい二塁打で締めくくった。

■「オバQ」声を震わす満塁弾

青木が二塁打なら、満塁本塁打をかっ飛ばして最後を飾った男がいた。「オバQ」のニックネームで親しまれた田代がその人だ。91年10月10日、地元横浜での阪神戦だった。「4番三塁」で出場した3回、2死満塁で打席に入ると、葛西稔の投じた2球目、カーブを左翼席にたたき込んだ。

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徳島・吉野川市出身。1974年入社。
プロ野球、アマチュア野球と幅広く取材を続けてきた。シーズンオフには、だじゃれを駆使しながら意外なデータやエピソードを紹介する連載「ヨネちゃんのおシャレ野球学」を執筆。
春夏甲子園ではコラム「ヨネタニーズ・ファイル」を担当した。