◆紙面企画
事件記者清水優 ブラジル体当たり
◆清水優(しみず・ゆたか)1975年(昭50)生まれ。38歳。東京外大ポルトガル語学科卒。98年入社。静岡支局、文化社会部、朝日新 聞社会部警視庁担当を経て、文化社会部に帰任。事件、事故など中心に行き当たりばったりながら体当たりで取材。体重95キロ。
手巻きずし大流行 ビーチにも「すし屋」
【リオデジャネイロ17日】ブラジルでは今、手巻きずしが大流行中だ。サンパウロ、リオで人気に火が付き、地方都市にもチェーン店が拡大中だ。ボサノバ「イパネマの娘」で有名なリオデジャネイロのイパネマ海岸ではすしネタを担いだ「イパネマのすし屋」まで登場。焼きそば、天ぷらなどの日本食も人気で、ブラジルの地酒「東麒麟」も親しまれている。初戦で勝ち点を取れなかった日本代表だが、親日派のブラジル人を味方につければ、19日(日本時間20日)のギリシャ戦はいけそうだ。
巨匠アントニオ・カルロス・ジョビンのヒット曲「イパネマの娘」。ブラジル音楽の中でもボサノバがよく知られる日本でもおなじみの曲だ。曲の舞台となったイパネマ海岸は、リオデジャネイロの白い砂浜だ。観光客でにぎわう浜を歩いていると「テマ~キ~」という変わった声を出しながら歩くサングラスの男たちを発見した。
なにやらすだれのかかった発泡スチロールの箱を担いでいる。声を掛けると「手巻きずし、1本8レアル(約380円)2本で15レアル(約720円)。うまいよ」という。
リオのビーチでは、よく冷えたココナツの実から直接飲むジュース売りから、ビーチパラソルに大量のビキニをぶら下げたビキニ売りまで、さまざまな物売りがビーチを歩いている。
だが、常夏のリオで、すしネタがもつのか。心配な記者の表情を読み取ったのか「大丈夫。氷でキリッと冷やしてあるよ」という。
- ネタが腐らないか心配だったが、氷を敷いた発泡スチロールの箱できっちり保冷していた
定番のサーモン巻きとキュウリとネギが入った野菜巻きを頼んだ。彼らはサングラスをかけたまま、中腰姿勢になり、2人がかりでにぎり作業に取りかかった。待つこと数分。わさびを溶いたしょうゆを大量に注入した手巻きの出来上がりだ。
- 腰をかがめ、2人掛かりで手巻きに取りかかる
ブラジルでは、日本食が10年来のブーム。にぎりずしのほか、焼きそば、天ぷら、そば、うどん、ラーメン、沖縄そばなどがあり、牛丼のすき家も上陸している。日本文化で好きな物を聞いても多くのブラジル人が日本食を挙げる。中でも最新流行は手巻きずし。都市部では「テマケリア(手巻きずし店)」も大にぎわいだ。
彼らはアルゼンチンからオンボロ車に乗り込み、浜の手巻き屋で旅費を稼ぎながらW杯を観戦に来た。握ってくれたのは本職がシェフのフランシスコ・ファラコさん(26)。「アルゼンチンでも手巻きブームが始まった。ブラジルで大流行中と聞き、手巻きで稼ぐことにした」と言う。
- イパネマのすし屋の自信作「サーモン巻き」
ちょっと脂っこい手巻きずしを想像したが、海岸での行商だけに調味料は最低限のものしか使わない。シンプルなサーモンの手巻きずしは予想以上にうまかった。