◆紙面企画
事件記者清水優 ブラジル体当たり
◆清水優(しみず・ゆたか)1975年(昭50)生まれ。38歳。東京外大ポルトガル語学科卒。98年入社。静岡支局、文化社会部、朝日新 聞社会部警視庁担当を経て、文化社会部に帰任。事件、事故など中心に行き当たりばったりながら体当たりで取材。体重95キロ。
ボクらのピッチはアマゾン川の底
【マカパ22日(日本時間23日)】赤道直下、アマゾン川河口の町、アマパ州マカパでは、川の干潮時に、水の引いた川底でサッカーが行われていた。泥の上のサッカー「FUTE-LAMA(フチラーマ=泥サッカー)」を見に行った。
世界一の705万平方キロの流域面積を持つアマゾン川の川底でサッカーができる。マカパに到着した深夜、川は白波を立てて護岸壁に押し寄せていた。翌朝、どこまでも続く黄土色の川が広がっていた。しかし、サッカーのポストらしい丸太が2本、川から顔を出す。引き潮が始まった午後4時、確かにポストが長くなった。午後6時半には、川岸が護岸から200~300メートル後退。ポストが根元まで見える状態になった。
川底の見え始めたアマゾン川を下流方向に下ると、本当にサッカーをやっていた。はだしで川底に立つと、波の残した模様が残る泥は結構しっかりしている。
- アマゾン川の川底で行うサッカー「フチラーマ」(撮影・清水優)
仲間たちとサッカーをしていたアンデルソンさん(24)に聞くと、このサッカーは「フチラーマ」というらしい。「芝生のグラウンドはサッカークラブしか使えない。ここなら無料だし、アマゾンからの風で涼しい」。子どもから大人まで、泥だらけになってサッカーに興じている。1日で使える時間は約4時間。徐々に水かさが増してくるため、ボールが浮き出したらやめる「潮時」だという。
1年に1回30~40チームが参加して大会が行われる。遊びでも、ダイビングヘッドや激しいコンタクトプレーも飛び出す。当然、泥だらけになるが、遠浅のアマゾン川に入って洗い流せばいい。荒れたピッチも、翌日にはアマゾン川がキレイにならしてくれている。
路上、湿原、貧民街の岩山…。さまざまなところで草サッカーを見たが、アマゾン川の川底までサッカー場にするとは。サッカー大国の奥深さを知った。