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紙面企画

事件記者清水優 ブラジル体当たり

事件記者清水優 ブラジル体当たり

◆清水優(しみず・ゆたか)1975年(昭50)生まれ。38歳。東京外大ポルトガル語学科卒。98年入社。静岡支局、文化社会部、朝日新 聞社会部警視庁担当を経て、文化社会部に帰任。事件、事故など中心に行き当たりばったりながら体当たりで取材。体重95キロ。

奴隷貿易で根付いたアフリカ密教


 【サルバドル23日(日本時間24日)】ブラジル北東部のバイア州サルバドルを訪れた。日本がC組2位で決勝トーナメントに進出した場合、準々決勝の会場となる地。植民地時代は、西アフリカ諸国からの奴隷貿易の拠点だった旧首都は、アフリカ由来の密教カンドンブレ、ウンバンダなどの黒人文化が色濃く残る。政府統計(2010年度)では、カンドンブレとウンバンダの信者は国民の0・3%とされているが、長年続いた差別を背景に公にしない信者も多いという。儀式の行われる施設で指導者に話を聞いた。

 サルバドルの市街地、急な階段を上っていくと、白と水色の小さな家が並んでいた。ブラジル全土に1240カ所以上あるというカンドンブレの宗教施設「テヘイロ」の1つだ。

 「ババ」と呼ばれている宗教上の最高位「ババロリシャ」の男性は、穏やかな声で話し始めた。「信者は、今のブラジル代表にもいる。彼らも信者だとは言わない。宗教が自由になった今でも差別を受けるからです」。

 カンドンブレはナイジェリアやベナンのヨルバ民族が、奴隷として連れてこられた時に、ブラジルに入った。ウンバンダはアフリカ、インディオの宗教や、死者と通じるスピリチュアリズムなどが混合した宗教だ。

 それぞれカトリック教徒から異端視され、迫害された。このため、神をキリスト教の聖人になぞらえ、儀式をカトリックのミサを行っているように偽装。ウンバンダの指導者の1人ジョゼ・ハイムンドさん(54)によると、キリストは主神「オルドゥン」の子で悪を善に変える変化の神「オシャラ」に当てはめられている。

ウンバンダの宗教施設内にあったエシューの祭壇(撮影・清水優)

 教典を持たない口伝の宗教のため、テヘイロによって違うが、カンドンブレには火、水、森、風など16種類の神がいて、ウンバンダには12種類の神がいる。さまざまなものに神様が宿るという日本の八百万神(やおよろずのかみ)の考え方に少し似たところもある。ウンバンダのテヘイロには赤い体をした悪魔のようなおどろおどろしい姿の神もいたが、ハイムンドさんは「部外者を驚かせて侵入を防ぐエシュー(神様)の姿。本来はコミュニケーションの神なんだ」と説明した。

 80年代には白人信者も増え始めた。それでも、異端視される傾向はまだまだ根強く「凶悪事件があると、疑われる」(ハイムンドさん)ことも多いという。カンドンブレのババさんは「我々は他の宗教に敬意を払うし、誰も排除しないし、誰も攻撃しない。それを知ってほしい」と話している。

 ◆カンドンブレとウンバンダ アフリカからブラジルに連れてこられた黒人奴隷がブラジルにもたらしたアフリカ系密教。政府の12年統計ではブラジル国民の人口は約1億9400万人。うち、カトリック信者が約64・6%(約1億2000万人)で最も多い。カンドンブレとウンバンダの信者は約0・3%(約58万2000人)だという。しかし、信仰を公にしない人も多く、実態はよく分かっていない。

















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