映画監督・谷健二の俳優研究所

ドラマ「あのクズを殴ってやりたいんだ」でさまざまな表情を魅せる奈緒に注目

映画監督谷健二氏が描いた奈緒の似顔絵
映画監督谷健二氏が描いた奈緒の似顔絵

映画とドラマの違い。よく聞く話だと、映画は写真から、ドラマはラジオから始まったという。なので、映像だけで物語を理解できる映画、音だけでわかるドラマが良い作品の前提となる。劇場で集中して観る映画に比べ、何かしら作業をしながらドラマを観ていることもあるので少し納得感はある。

例えば、子どもが家に帰ってくると玄関に知らない人の靴があるとする。映画だとその靴をアップで映せば、靴の持ち主が次の展開のキーマンとなることがわかる。そこでドラマだと、子供が大声で「お母さん、誰か来てるの?」と尋ねるといったところだろうか。とくに忙しい朝の時間帯のドラマなどは、今でもそのように工夫していることが感じられる。

さて、そこで今回紹介したいのは現在放送中のドラマ「あのクズを殴ってやりたいんだ」で主演の奈緒。物語は、奈緒演じるほこ美が、結婚目前に彼氏の浮気が発覚し破局するところから始まる。そして、どん底の中で出会った運命の男・海里(玉森裕太)に影響を受けボクシングをはじめるが…。終始クズ男に翻弄(ほんろう)される姿が描かれるいわゆるララブコメだが、ボクシングとの向き合いなどがよいアクセントになっていて、エンタメ作品としても十分に見応えがある。

奈緒といえばドラマ「あなたの番です」での怪演が思い出させる。あれから5年、着実にキャリアを重ね今や立派な主演女優である。その彼女の特徴といってもいいのが多彩な表情。今作でも振り回されるその模様を喜怒哀楽さまざまな表情で楽しませてくれる。顔の表情、無表情だと伝わらず、やりすぎるとコントになるが、彼女はそのあんばいが絶妙である。確かな演技力があるからこそできる芸当なのかもしれない。そして、前段の話からするとドラマの定義をいい意味で壊してくれる存在である。

今後の展開とともに、彼女のさらなる活躍に期待です。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて南青山でカレー&バーも経営している。最近では映画「その恋、自販機で買えますか?」「映画 政見放送」、10月18日には映画「追想ジャーニー リエナクト」が公開。

向井地美音

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営している。最新作「渋谷シャドウ」が11月28日から公開予定。

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