辰吉寿以輝の現在地<17>「ええ子やなあ」王者・中嶋一輝の印象「もちろん、倒して勝ちます」

平成のカリスマ、丈一郎を父に持つ辰吉寿以輝(28=大阪帝拳)。

日本初の親子世界王者につながる道を一途に歩む。

12月にも、東洋太平洋スーパーバンタム級王者中嶋一輝(31=大橋ジム)に挑戦することが決定的となった。

後楽園ホールで中嶋と握手をかわしてから2日後、大阪帝拳ジムに寿以輝を訪ねた。

ボクシング

ジムを包む高揚感

大阪帝拳ジムがオープンする午後4時。

エレベーターを3階で下りると、トレーナーのアトンがいた。

「寿以輝、気合、入っているよ。昨日も東京から帰ってきて、練習してた」

声を弾ませるアトンの顔を見て、うれしいのは寿以輝だけじゃないと感じた。

ジム全体に高揚感がある。

プロデビューから10年目でたどりついた初のタイトルマッチ。

絶滅寸前のたたき上げ

寿以輝は「平成のカリスマ」辰吉丈一郎の次男だが、アマチュアボクシングの経験はなかった。

試合の経験も。

20年以上前、父の練習についてきて、サンドバッグをめちゃくちゃにたたいていた姿を思い出した。

2002年12月15日の辰吉丈一郎復帰戦。 試合後、辰吉丈一郎はファンに向かって挨拶する。右が次男の寿以輝

2002年12月15日の辰吉丈一郎復帰戦。 試合後、辰吉丈一郎はファンに向かって挨拶する。右が次男の寿以輝

昨今の主流であるアマエリートからのプロ転向組ではない。

今や絶滅寸前といえる、たたき上げのボクサーだ。

父丈一郎でさえ、アマチュアで全日本社会人選手権のタイトルをとってから、プロ入りしている。

15年4月17日、大阪府立体育会館。

世界王者山中慎介の防衛戦の前座として組まれたプロデビュー戦で、忘れられないシーンがある。

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スポーツ

益田一弘Kazuhiro Masuda

Hiroshima

広島市生まれ。2000年の入社からバトル、相撲、サッカー、野球を担当して、13年からオリンピック担当。
14年ソチ、16年リオデジャネイロを取材して、18年平昌、21年東京は五輪班キャップを務める。東京五輪後に一般スポーツデスク。
大学時代はボクシング部で全日本選手権出場も初戦敗退。アマチュア戦績は21勝(17KO)8敗。