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史上初の女性棋士誕生へ「不思議とここ一番で」西山女流3冠の“剛腕”を知る師匠の言葉
将棋史上初の女性棋士を目指す西山朋佳女流3冠(29)が22日に大阪府高槻市の関西将棋会館でプロ棋士編入試験5番勝負の第5局に臨みます。最終局に勝てば合格、負ければ不合格となる運命の一局。かつて取材した西山女流3冠の師匠の言葉を思い出しました。
大阪狭山市出身の西山女流3冠は10歳の頃、大阪府羽曳野市にあった伊藤博文七段(64)の将棋教室の門をたたきました。小学校5年のときに小学生女流名人の全国大会で優勝したことがきっかけとなり、西山女流3冠は「奨励会に入りたい」という思いを強めたそうです。
将棋界のプロ制度は、男女の区別がない「棋士」と女性だけの「女流棋士」があります。いわば別リーグで戦っているプロです。これまで棋士になった女性はいません。
棋士になるには原則、プロ棋士養成機関「奨励会」に6級で入り、昇級昇段を重ね、三段リーグを目指します。半年ごとに行う三段リーグで、上位2人に入ることができれば、棋士(四段)になることができます。
もう1つの道がプロ棋士編入試験。「棋士」が参加する公式戦で、直近で10勝以上、かつ勝率6割5分以上の成績を残すと、編入試験の受験資格を獲得できます。西山女流3冠は、今回、この条件をクリアしました。
師匠の伊藤七段は「女流の道へ進めば、すぐに女流棋士になれると思っていた」そうですが、本人の「奨励会に入りたい」という強い意志を受け止めました。
西山女流3冠は、10年に奨励会に入り、15年に三段に昇り詰めました。19年度後期には3位となりましたが、棋士にあと1歩、届きませんでした。
子どものときから「相当、負けず嫌い」。一方で「人への気づかいができ、思いやりがあった」といいます。豪快な攻めの棋風から「剛腕」「暴れ馬」とも評される生粋の勝負師タイプは、1勝2敗となった崖っぷちの編入試験第4局でも、終盤に“剛腕ぶり”を発揮しました。
最終局は名古屋大大学院工学研究科中退という棋士としては異色の経歴を持つ柵木(ませぎ)幹太四段(26)と対戦します。西山女流3冠は運命の最終局に向け「大一番、泣いても笑っても最後。悔いのないように挑みたい」と語っています。
将棋界初の快挙へ。「不思議と、ここ一番では負けたことがない」。師匠の言葉を思い出しました。
【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)