主演&監督 松重豊のあふれるシリーズ愛/劇映画 孤独のグルメ(日)
幕開けは旅客機の中。まさか皮切りは機内食? のわけがなく、熟睡した井之頭五郎は空腹のまま出張先のパリに降り立つ。
「腹が…減った!」
シリーズ10を数える人気ドラマの映画化は、番組の決まりごとをきっちり守りながら、舞台を日仏韓に広げ、あげくに五郎の遭難、無人島グルメまで-正月映画らしい盛りだくさんがうれしい。自ら初メガホンを取った主演、松重豊のシリーズ愛に満ちている。
最初の食事はパリの路地にたたずむレストラン。湯気の立つオニオングラタンスープがこんもりとした具ごと五郎の口に吸い込まれる。思わずこちらの胃袋も動く。腹で見る作品だ。
「子どもの頃に好物だったスープを死ぬまでにもう1度飲みたい」
パリ在住のお年寄りから依頼を受け、その出身地五島列島から五郎の「味探し」の旅が始まる。パリの杏と塩見三省に韓国の内田有紀、日本のオダギリジョー、そして遠藤憲一…配役はこれぞという形ではまっていて、まるで自然な振る舞いに、松重監督とのあうんの呼吸が感じられる。
ドラマを踏襲した堅実なカメラワークもあり、最後まで安心して楽しめた。【相原斎】
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