ファンタジスタ市川実日子、民放連ドラ初主演 バカリズムの世界観を創造性溢れるプレーで魅了
俳優市川実日子(46)がバカリズム脚本の日本テレビ系主演連続ドラマ「ホットスポット」(日曜午後10時半)で民放連ドラ初主演を務めている。臨むスタンスは変えず、力まず、ひょうひょうとした座長として現場をけん引中。「富士山麓の田舎町で宇宙人に出会う主人公-」というファンタジーあふれる作品を届ける思いを聞いた。【松尾幸之介】
★宇宙人姿で宙づり!?
宇宙人の正体は1月12日の第1話放送まで内密の約束だった。「どういう想像されています? 知らない状態で見た方が絶対いいですよ。で、記事では見た感想も書いてもらって。私のインタビューは半分でいいですから。あと半分は感想で。その方が読んでいて面白いですし」。明るく振られ、あまり深く考えずに返してしまった。「確かにそういうのも面白いですね」。
田舎町のビジネスホテルで働くシングルマザーの主人公、遠藤清美を演じる。ある日、宇宙人と出会い、生活上のささいな事件の解決をお願いする物語だ。出演にあたってやりたいことを聞かれた際は「宇宙人の格好をして宙づり」と回答。願いがかなったかは「見てのお楽しみ」と笑った。
約45分間インタビューしたが市川はまさしく“ファンタジスタ”。平凡な日常とファンタジーが織りなす「地元系エイリアン・ヒューマン・コメディー」の心臓として、最高の人選となっている。
「私を主演にって、何て勇気のある人たちなんだろうと感じましたね。声をかけてくださって、すごくありがたいなと。プレッシャーは…見たら感じるんですかね。今は目の前にあるものに向かうことに必死で。(宣伝で)バラエティーに出たり、慣れないこともやっています。生放送にも出たんですよ。でも、周りのみなさんが私が主演、主演しなくてもいいようにしてくれているように感じていますね。今回はセリフも多いです。台本にずっと(役名の頭文字の)『清』『清』と書いていますから。次の日も『清』『清』と。びっくりしました。私どうなっちゃうのかしらって。セリフの覚え方、教えてもらってもいいですか?」
★「ブラッシュアップ」組
同じバカリズム脚本作として昨年日テレで放送された、「ブラッシュアップライフ」のスタッフが再集結して届けるオリジナル作。前作は主人公が何度もタイムリープしながら人生を歩む「地元系タイムリープ・ヒューマン・コメディー」で橋田賞脚本賞など国内外で28もの賞を受賞した。今回もクスッと笑える会話劇は健在。市川ら主要キャストは入念な読み合わせを繰り返し撮影に臨んだという。
「台本を読んだ時に『ブラッシュアップライフ』とは全然違う作品にするんだろうな、というのは感じました。さっきバカリズムさんに会って『いつ(ドラマに)出てくるのか楽しみにしています』と言っておきました(笑い)。今回も4、5人でテンポよく会話するのですが、それをやるには他の人のセリフも覚える必要もあったり。結構何度もテストをしたりしてやっています。私の役は監督から『市川さんと似ていると思いますよ』と言われているので、近いものになっているのかな。自分は役をなじませたいタイプではあって、役を好きになりたいし。どんどん力みたくないと思うようになってきているのかな。『本人に近づけて』ということも最近増えましたね」
★見る景色変わったら
今作で映し出されるのは、職場やレストランなどでの何げないやりとりも多い。そこから感じた発見もあった。
「ある日ふと、日本中の喫茶店とかでこういう会話って生まれてしているんだろうなと思って。そう思うと、みなさんの日常を見ていたらすごく面白いんだろうなとも感じるようになりました。なので、この作品を見てくださった方が『私の日常っていとおしいものなのかも』と思ってもらえる作品になってくれたらいいなと思います。…今、良いこと言いましたよね? じゃああと半分は、感想で埋めてもらって(笑い)」
私生活ではお茶好き。19歳の頃に中国茶に出会ってハマった。旅行好きでもあり、毎年夏に中国へ足を運んでいる。1日1回いれるようにしているが、今はセリフ覚えに時間をとられているという。
「お茶にはもともと興味があって、いれているとリラックスできますね。あと、撮影で富士山を見たりしているんですけど、東京とは全然違うなと思うんです。(共演する)鈴木杏ちゃんが今、長野県に移住していて、私も1回違うところに住んでみたいなと思うんです。ずっと東京ですからね。飲む水や見る景色が変わったら、きっと何かが変わるじゃないですか。気持ちいいなと思う場所がいいと思います」
セリフ覚えや重圧など大変なことも多いが、現場の温かさに助けられていることも繰り返し語った。「現場に行くと心地よくて笑っていたり、びっくりするくらい居心地良くしていただいていて、本当に神様に感謝していますね」。
取材の最後は「また5話が終わったくらいで会いましょう。まだ私も見てないんだもん」と話して別れた。第1話で出てきた清美は「そのまんま市川さんじゃない?」と思うようなキャラクター。宇宙人はまさかの人選でスタートした。夢を与えてくれるファンタジー。次回以降も気になって仕方がない。
▼「ホットスポット」日本テレビ小田玲奈プロデューサー
ファミレスなどでの会話を隠しカメラで撮っているようなものにしたい、そうしたお芝居ができる人を探している中で市川さんを起用させていただきました。いつも名前が挙がっている役者さんで、バカリズムさんの世界観にも合うと思っていたので間違いはなかったなと感じています。スーパーで買い物をするお芝居は、監督やメークさんも「自分を見ているようだ」とうなるくらい自然体でした。現場ではよく笑って空気も良くしてくれていて、誰とでも打ち解けられる親しみやすさもあります。「ブラッシュアップライフ」を好きでいてくれた方にも、間違いなく面白いと思っていただける作品です。
◆市川実日子(いちかわ・みかこ)
1978年(昭53)6月13日生まれ、東京都出身。94年雑誌「Olive」専属モデルとして芸能界入り。98年俳優デビュー。03年初主演映画「blue」で第24回モスクワ国際映画祭最優秀女優賞。その後も多数作品に出演、17年映画「シン・ゴジラ」で第40回日本アカデミー賞優秀助演女優賞。映画「よこがお」「初恋~お父さん、チビがいなくなりました~」で19年日刊スポーツ映画大賞助演女優賞。姉は俳優の市川実和子。
◆「ホットスポット」第1話VTR
主人公、遠藤清美はある日、交通事故に遭いそうになったところを宇宙人に救われる。「会ってみたい」と熱望する幼なじみ2人に紹介したほか、職場で起こった事件の解決もサポートしてもらうなど、宇宙人と過ごす不思議な日常が始まりを告げ…。