映画監督・谷健二の俳優研究所

配信ドラマ「推しの子」有馬かな熱演中の原菜乃華に注目

映画監督谷健二氏が描いた原菜乃華の似顔絵 
映画監督谷健二氏が描いた原菜乃華の似顔絵 

アニメの実写化。すでにたくさんあるが、正直なかなかに難しいと感じる。原作が小説であればそもそもの画がなく、漫画であれば画はあるものの声はなく動いてもないので、より想像に近いものを提供すれば納得感はでるが、アニメの場合はすでに手本があるので、どこまでなぞればよいのかのさじ加減が難しい。舞台であれば多少大げさでも成立しそうだが、実写化となればリアリティーが求められる場面も多いのではないかと思われる。

さてそこでまず紹介したいのは昨年末からAmazonプライム・ビデオで配信が開始されたドラマ「推しの子」。原作となる漫画がヒットしアニメになり、今回満を持して実写化となった。アニメから見始めたが、大人が見ても十分に楽しめる内容である。転生×復讐(ふくしゅう)が軸になり、そこにアイドルやリアリティーショー、2・5次元舞台と旬な芸能界事情がこれでもかと展開される。飽きさせない作りに加えテンポもよく、よくできたエンタメ作品だと思う。

そして実写化ドラマ。アニメ2シーズン(24話)を8話で展開。内容的には、半分か3分の2といったところだろうか。短くなることでダイジェスト版になりがちだが、構成や内容をうまく変えていることで、もともとのファンには飽きさせなく、実写化からの始めた人にも十分に楽しめる作品になっている。本編でも漫画の舞台や映像化の話が出てくるが、原作リスペクトを忘れずに粘り強く制作したのではないかと想像する。

そこでお今回紹介したいのは子役出身の女優・有馬かなを演じた原菜乃華。本人も6歳でデビューし、数々の作品にこれまで出演。2017年には主演映画「はらはらなのか。」が公開されるなど10代の時から業界内では名が通っていた。世間に認知されるようになったのはドラマ「真犯人フラグ」(2021)や、新海誠監督の「すずめの戸締まり」(2022)あたりからだろうか。丸亀製麺のCMでは元気いっぱいの姿を魅せており、最近の活躍から同年代の俳優から1歩リードした感はある。まだ21歳だということに驚きだが…。

有馬かなと原菜乃華、お互い子役出身という共通点があったのか、本当によく演じている。身長こそ違うが、漫画やアニメの中から出て来たといっても驚きがない。プライドが高いがどこかもろく、しかし負けず嫌いゆえに常に前に進む有馬かな。彼女を、漫画やアニメでなく実写として画面いっぱいに躍動している姿を見れただけでも、実写化の成功だといえる。他の若手キャストもいいが、再現度でいうと頭一つ抜け出しているのではないかと思う。

今年も映画「ババンババンバンバンパイア」に「見える子ちゃん」(主演)、4月からは朝ドラ「あんぱん」に出演とさらなるブレイクが望まれる。今後の活躍に期待です。(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて南青山でカレー&バーも経営している。最近では映画「その恋、自販機で買えますか?」「映画 政見放送」、10月18日には映画「追想ジャーニー リエナクト」が公開。

向井地美音

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営している。最新作「渋谷シャドウ」が11月28日から公開予定。

おすすめ情報PR

芸能ニュースランキング