コラム・特集
五輪百景
「日本人の心」を愛し、伝え続けた人だった。プラハの自宅には日本刀を飾り、メールアドレスは1964年東京五輪と桜を意識した「sakura1964@……」で始まる。年間100回を超える講演で…[続きを読む]
トラック一面に日の丸が広がった。それが誇らしく、怖かった。閉会式は勝者と敗者が入り乱れ、人種も国籍も宗教も解け合って、みんなが笑っていた。敵意や憎悪のない世界。幻ではないのだ。五輪の力、…[続きを読む]
水面から空に向かって、脚が真っすぐに伸びる。一糸乱れぬ美しい一直線は、まるで芸術作品のようだった。2つの銅メダルを獲得したシンクロ日本代表の演技を見ながら、ふと思った。井村雅代ヘッドコー…[続きを読む]
日本の最終走者があのボルトに食らいつき、米国を振り切る。陸上男子400メートルリレーでこんなシーンを目撃できるとは予想していなかった。08年北京五輪の銅メダルは、前回覇者の英国と世界王者…[続きを読む]
「金メダルが取れなくて、ごめんなさい」。泣いて謝る吉田沙保里を見て胸が痛んだ。04年アテネ五輪の屈託のない笑顔を思い出したからだ。初採用された大会で頂点に立った22歳は「五輪の金メダルだ…[続きを読む]
日本に神が宿った。そうとしか思えない。女子レスリングの3つの金メダルに、卓球男子団体の水谷の大金星。世界の頂点を争うハイレベルな決勝戦で、日本選手が土俵際からの逆転に次ぐ逆転。あと1歩で…[続きを読む]
万感の涙にむせぶ福原は、あの3歳の「泣き虫愛ちゃん」なのだ。そう思うと、涙腺が緩んできた。泣きながらラケットを振っていた幼い少女が、日本の大黒柱として五輪2大会連続メダルの快挙を成し遂げ…[続きを読む]
陸上男子100メートルの表彰式で、銀メダルのジャスティン・ガトリン(米国)が観客にブーイングを浴びせられた。功績に敬意を表してたたえる儀式の場で、こんな現象は見たことがない。一転の大歓声…[続きを読む]
96年ぶりの日の丸を背負った錦織圭が、きらきらとまぶしかった。恐るべき忍耐と集中力で、ついに強敵ナダルの心をくじいたのだ。体力や技術を超えた心の格闘に打ち勝った錦織には、何か特別な力が宿…[続きを読む]
陸上女子100メートル決勝で、フレーザープライスの五輪3連覇を阻んだのは、同じジャマイカの24歳、トンプソンだった。「王国復活」に執念を見せる米国のボウイに体ひとつ差をつける快勝。29歳…[続きを読む]
日本柔道男子の長かった下り坂が、ようやく上を向いた。最重量級の原沢久喜は金メダルこそ逃したが、無敵王者リネールを土俵際まで追い込んだ。金と銀の差は「指導1」という紙一重。五輪史上初の金ゼ…[続きを読む]
五輪では試合とともに、戦い終えた選手たちの第一声も楽しみにしている。人間をさらけだした、飾り気のない感情がむき出しになるからだ。だから時代に刻まれる名言が生まれたりもする。心情をストレー…[続きを読む]
「もったいない」。サッカー五輪代表の戦いぶりに、何度つぶやいたことだろう。チームはよく整備され、完成度は4カ国の中でも突出していたように思う。だが、初戦のナイジェリア戦は選手の足が地につ…[続きを読む]
正直に言うと、目を疑った。競泳男子800メートルリレーの銅メダルである。あの64年東京五輪以来の快挙を、まったく予期していなかったからだ。52年前、地元開催で沸いた五輪で、日本は確かにこ…[続きを読む]
男子体操の白井健三のインタビューでのコメントが強く印象に残った。「人生で一番心臓に悪い日だったけど、間違いなく一番幸せな日でした」。チーム戦の醍醐味(だいごみ)をこれほど的確に捉えた言葉…[続きを読む]
日本人の身体能力は欧米人に劣るという固定観念が砕かれた。大男たちを置き去りにする萩野公介の泳ぎを見たからだ。男子400メートル個人メドレーで金メダルを獲得した翌日、200メートル自由形で…[続きを読む]
人はメダルの色に一喜一憂する。誰だってより輝く方がいいに決まっている。だが、選手は必ずしもそうではない。銅メダルを首にかけた女子重量挙げ48キロ級の三宅宏実が、こんなコメントをした。「前…[続きを読む]
開会式の聖火がまぶしかった。頻発するテロの恐怖や、日本を襲う天変地異の不安を、すべて蒸発させてしまうような強い光と熱だった。色彩に満ちた饗宴(きょうえん)とサンバの享楽のリズムが、人々の…[続きを読む]
五輪取材歴28年の首藤正徳記者(51)がコラム「五輪百景」をお届けします。◇◇ジャスティン・ガトリン(米国)にはまんまとだまされた。05年8月の陸上世界選手権(ヘルシンキ)男子100メー…[続きを読む]