◆評論家
秋田豊(あきた・ゆたか)
1970年8月6日、名古屋市生まれ。愛知高―愛知学院大を経て93年鹿島入り。4回のリーグ優勝などに貢献。98、02年W杯日本代表。名古屋、京都を経て07年に引退。10年7月に京都の監督に就任。J1通算391出場、23得点。
「主人公」不在で方向性失った
<W杯:ブラジル1-7ドイツ>◇準決勝◇8日◇ベロオリゾンテ
ネイマールの抜けた穴は、あまりにも大きかった。実は、開幕戦のブラジル-クロアチア戦をスタンド観戦し「このチームにネイマールがいなくなったら、どうなるんだろう?」という疑問があった。彼を生かすために、FWフッキまで下がって守備をしていた。彼の活躍がチームの勝利に直結することを、チーム全体が分かっていたので、タレント軍団が労を惜しまず守っていた。
しかしその主人公が抜けると、チームは方向性を失った。軸を欠いたことで、MFオスカルもFWフレジも本来の力が出せない。攻撃が機能せず、それが守備に影響する悪循環となって大量失点につながった。
これまでネイマールは「すぐ倒れる。痛がる」と批判もされた。それは相手がファウルでしか、止められないという証拠でもある。高い位置でボールキープし、ファウルを受け、複数の相手を引きつけることで、時間を稼ぐことが出来、その分、守備陣は陣形を整える時間を稼げた。しかし彼がいなかったドイツ戦は、チームとしてほとんどファウルをもらえなかった。その分、DF陣はラインがそろわないまま、相手の攻撃を受ける回数が増えた。
同じことが、FWメッシを擁するアルゼンチンにも言える。チームの作り方はそれぞれあるため批判はできないが、主役への依存度が高いチームは、その選手が抜けた時は、もろく崩れることがある。この日のブラジルがそうだった。(日刊スポーツ評論家)