◆評論家
藤田俊哉ノート
◆藤田俊哉(ふじた・としや)MFとしては史上初の100得点を達成。幅広い経験をもとに独自の 視点を生かした評論を「藤田俊哉ノート」と題し、これからの日本サッカーのあるべき姿や、代表戦での勝負を分けたプレーの分析を読者に届けます。 欧州での指導者業挑戦のため中断した「藤田俊哉ノート」がブラジルW杯で復活。
全対応狙い「らしさ」失ったスペイン
<W杯:スペイン0-2チリ>◇1次リーグB組◇18日◇リオデジャネイロ
スペインは、全てに対応できる布陣を引こうとした。チリDF陣の身長が低いことから、最前線に空中戦にも強いディエゴコスタをおいた。初戦のオランダ戦で、背後を取られた場面が目立った最終ラインはDFピケを外し、ハビマルティネスをスタメン出場させた。さらにチームの心臓、プレーメーカーのシャビを外し、ドリブラーのペドロを入れるなど、先発メンバーを入れ替え、立て直しとともに勝負に出た。
パス回しも、高さの攻撃も、ドリブル突破もできると踏んだ布陣を組んだが、どれもうまく機能しなかった。いろんな策を講じるかのようなピッチ上に多くのオプションをちりばめたが、結局、持ち味のポゼッションもできずじまいで終わった。ゼロトップで目まぐるしく華麗にボールを回す、本来の姿が影を潜めた。
序盤からミスが多く、その分、体力を使った。本来ならパス回しで相手の体力を奪わないといけないのに、逆に体力を消耗したことで、後半の勝負どころの時間帯では、すでに足が止まってしまった。中盤を完全に支配できないから、縦パスも入らず、相手が作ったブロックの外でボールをつなぐだけになった。
マラカナンには7万4000人が集まり、その9割近くはチリ・サポーターで埋め尽くされていた。「ホーム」で伸び伸びとプレーしたチリに対し、スペインはらしさを出せないままで、心残りの試合となった。(元日本代表MF)