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紙面企画

私のレジェンド

私のレジェンド

過去19回行われた世界最大の祭典。全世界のファンが魅了され、スーパースターに酔った。誰にでもいるW杯のヒーロー、それぞれの一押し選手を「私のレジェンド」として連載する。

マラドーナ5人抜き まるで芝居の立ち回り


<元NHKアナウンサー山本浩氏>

 過去19回行われた世界最大の祭典。全世界のファンが魅了され、スーパースターに酔った。誰にでもいるW杯のヒーロー、それぞれの一押し選手を「私のレジェンド」として連載する。第1回は長年W杯などサッカーの実況に携わってきた元NHKアナウンサーの山本浩氏(60=法大教授)。あげたのはもちろん、アルゼンチン代表MFディエゴ・マラドーナ(53)だ。

 マラドーナしかないですね。初めて実況した86年大会の印象は、強烈でした。1人だけ次元が違った。実況をすると、すごさが分かる。「マラドーナ」の名を呼ぶと、何かが起きる。へたな選手だとミスで「あーあ」という感じで実況もしぼむ。マラドーナは前を向いてドリブルすると、最後は倒される。上がり調子でリズムが出るんですよ。

 5人抜き、もちろん覚えています。実はパスを受けて反転した時は、まだ実況がついていってない。(解説の)岡野(俊一郎)さんとの話が長引いて「いけない、しゃべらなきゃ」と。途中からは「マラドーナ」「マラドーナ」の連呼。そう言うしかないですよ。

 最後に「来た~」なんです。前半から何度もファウルで倒されていたので「ついに来た」なんです。「来た」で最後の「マラドーナ ! 」が生きた。最後の「マラドーナ」は「ゴール」と同じ。用意していたわけでもないし、自然と出た。計算してしゃべれるほど、頭良くないですよ(笑い)。

 イングランドの選手が次々と倒れていくのに驚きました。地震でも起きたように。あれじゃ、田舎芝居の立ち回りの切られ役。それが不思議で、元日本代表DFの斉藤俊秀さんに聞いたら「目です」って。視線フェイントで逆をとられた選手が倒れる。メッシは狭いところを抜くけど、マラドーナは狭い空間にしない。ゼリー状のものに守られている感じ。相手を近づけないすごさがありました。

 あの試合の実況は自分としては失敗なんです。神の手ゴールのハンドが分からなかった。帰国して「いい実況だった」と言われ、何のことか分からなかったですから。ただ、そう言ってもらえるのも、マラドーナだから。そのプレー、話題性、彼以上の選手は、もう出てこないでしょうね。

 ◆ディエゴ・マラドーナ 1960年10月30日、アルゼンチン・ブエノスアイレス州生まれ。アルヘンチノス・ジュニアーズを皮切りにボカ・ジュニアーズ、バルセロナ、ナポリなどでプレー。16歳でデビューした代表では、82年から4大会連続W杯に出場し、21試合出場で8得点をあげ、優勝1回、準優勝1回を記録した。37歳で引退後は指導者に転身し、10年W杯ではアルゼンチン代表監督を務めた。

















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