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OGGIの「毎日がW杯」
荻島弘一(おぎしま・ひろかず):1960年(昭35)東京都出身。84年に入社し、スポーツ部勤務。五輪、サッカーなどを担当して96年からデスク。出版社編集長を経て05年から編集委員として現場取材に戻る。
「サッカーは最後はドイツが勝つスポーツ」
最激戦グループだと見ていたG組で、ドイツと米国が初戦白星をあげた。
「死の組」と呼ばれでいたのは優勝経験のあるイタリア、ウルグアイ、イングランドが入ったD組だったが、G組の4カ国は全チームが前回大会で決勝トーナメントに進出。過去5大会で日本しか1次リーグを突破していないC組などに比べ、レベルの高さが際立つ。
そんな中でも、ドイツの強さは圧倒的だった。ロナルドのポルトガルとの試合は、1次リーグ屈指の好カードとも言われたが、内容的には完勝。開始12分にミュラーのPKで先制し、前半だけで3得点。同37分にはミュラーに頭突きをしたポルトガルDFぺぺが退場となり、試合の行方は早々と決まった。
ブラジルが先制点を許したり、スペインがオランダに惨敗したりと、優勝候補がもたつく中で、ドイツだけは全く危なげない。ここまで競った試合が多く、最後まで目が離せない1次リーグだけど、この試合は前半で寝てしまった人も多かったのはと思う。それほど強さが圧倒的だった。
W杯を見だした時から、常にドイツ(かつては西ドイツ)は強かった。内容がどうであれ、確実に勝つサッカー。優勝回数こそブラジルの5回、イタリアの4回に劣る3回だが、決勝進出は7回とブラジルに並ぶ最多。過去3大会は、準優勝、3位、3位と安定した成績を残している。
元W杯得点王のイングランド代表FWリネカーは、名言を残している。「サッカーは単純。22人がボールを奪い合い、最後はドイツが勝つスポーツ」。この言葉には、全世界のサッカーファンがうなずいたことだろう。完膚なきまでに相手をたたきつぶし、蹂躙(じゅうりん)するサッカー。初戦で完敗し、退場者にけが人まで出したポルトガルのロナウドは今大会の「犠牲者」第1号になった。
ブラジルの強さとは違った「まじめな強さ」。基本に忠実に、献身的にプレーをするのが伝統。創造力あふれるプレーをするのは、前線のエジルくらい。後の選手は走って、蹴って、ゴールを狙う。「面白みがない」という声も聞こえてくるが、そんな現実的なサッカーに徹するからこそドイツは常に強いのだ。
国歌を歌う選手を見ていても「まじめさ」が伝わってくる。ほとんどの選手が髪を短くして、サイドは刈り上げ。サッカーの場合は髪の毛を「遊ぶ」選手も多いけれど、ドイツ選手にはいない。アンチドイツの友人は「銀行員チーム」と呼ぶが、そんなムードもドイツの強さなのだろう。
ドイツの上位進出は、1試合を終えた時点で確実だと思う。ブラジルやアルゼンチンなど南米の強豪に対抗できるのは、スペインではなくてドイツだと。期待しているゲッツェは堅さもあってか不発だったが、銀行の新入社員も慣れてくれば仕事をするだろう。
楽しみなのは、クリンスマン監督率いる米国との試合。ドイツのレジェンドを相手にしても、いつも通りにまじめなサッカーを貫いて、最後にはしっかりと勝ってしまうのだろうと思うけど。