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OGGIの「毎日がW杯」
荻島弘一(おぎしま・ひろかず):1960年(昭35)東京都出身。84年に入社し、スポーツ部勤務。五輪、サッカーなどを担当して96年からデスク。出版社編集長を経て05年から編集委員として現場取材に戻る。
Vオッズ最下位もぶれなかったコスタリカ
「死の組」を真っ先に抜けたのは、コスタリカだった。イタリア、イングランド、ウルグアイの優勝経験国が同居したD組で、コスタリカが2連勝。勝ち抜けを決めた。今月2日の強化試合で、日本に1-3と敗れたチームが、本番で見事に覚醒してみせた。
4回目の出場で過去最高はベスト16、英大手ブックメーカーの優勝オッズは他の3カ国が26倍だったのに対し、出場32カ国中最下位の2501倍だった。「コスタリカから何点とるかが勝ち抜けのカギ」とまで言われていたチームが、激戦区を勝ち抜けたのだ。
日本と対戦した時、W杯では苦戦すると思った。DFラインに統一感がなく、何度も裏を取られた。カウンターも、それほど脅威には思わなかった。ピント監督の「こんなに攻められたことはない」という日本戦後のコメントを聞いて「W杯で大丈夫なのか」と、心配してしまった。
それでも、コスタリカはぶれなかった。イタリア戦でも5バックでDFラインを高く保ち、ボールを奪ってからは前線への素早くつないでゴールを狙った。あれほどギャップのあったDFラインは修正され、焦るイタリアから11ものオフサイドを奪った。前線からのプレスでロングパスの出所を押さえ、ピルロを徹底マークして孤立させた。相手を追い詰め、ルイスの決勝点で勝ちをもぎとった。
90年大会で1次リーグを突破した時も「堅守速攻」だった。ブラジルには敗れたものの、スコットランドとスウェーデンに勝利。優勝オッズ最低だった初出場国の快挙を、当時の日刊スポーツは「仰天決勝トーナメント進出」と伝えた。
組織的なコンパクトな守備をベースに、前線のタレントを生かすサッカー。そんな「コスタリカらしさ」を貫いてきた。02、06年のW杯では1勝しかできなかったが、Jリーグ東京でもプレーしたワンチョペをエースに、同じようなサッカーをしてきた。
「コスタリカのサッカーは世界に通用する。私は決勝トーナメント進出を信じている」。大会前、ピント監督が自信たっぷりに発した言葉を誰が信用しただろう。それでも、カリブの小国は強豪国を「らしいサッカー」で倒した。「日本らしく」というばかりで、それを表現できない日本代表とは対照的だ。
これで、敗退が決まったイングランドとの最終戦を残すコスタリカの1位突破が濃厚になった。決勝トーナメント1回戦でD組と対戦するC組への影響も少なからずあるはず。以後は、社内での妄想たっぷりな会話。
「突破を決めているコロンビアは、悲願のベスト8入りを目指してイタリアよりはコスタリカと対戦したいだろうな。日本に大敗し、コートジボワールが勝てば2位抜けができる」
「わざと負けるということですか」
「わざと負けたら問題になるだろうけど、メンバーは落とすよね。この気候で疲れが心配だろうし。ブラジルなどと違って選手層は厚くないから、日本に3点差ぐらいで負けてもおかしくない」
「でも、コートジボワールが勝たなかったら、2位抜けできないですよね」
「その時は、1位で抜けるだけ。そうなると、日本が2位になるなあ」
「コスタリカと再戦、ベスト8もありますね」
あくまでも妄想だが、決勝トーナメントに向けてさまざまな駆け引きが行われるのが、W杯の面白いところ。以前にも「?」という試合はあった。C組最終戦は、D組の順位が確定してから行われる。まあ、いずれにしても日本は勝つしかないのは間違いない。「日本らしい」サッカーを、今度こそ見せてほしい。