◆WEB企画
OGGIの「毎日がW杯」
荻島弘一(おぎしま・ひろかず):1960年(昭35)東京都出身。84年に入社し、スポーツ部勤務。五輪、サッカーなどを担当して96年からデスク。出版社編集長を経て05年から編集委員として現場取材に戻る。
4強進出国が持つ「勝者のメンタリティー」
ブラジル-ドイツ、アルゼンチン-オランダ。1次リーグから波乱続きだった大会も、準決勝は順当な組み合わせになった。ベスト4進出回数は、ドイツが最多の13回目で、ブラジルが11回目、アルゼンチンとオランダはともに5回目。ブラジル、アルゼンチン、ドイツは今大会の優勝オッズトップ3で、4番手のスペインを下したのがオランダだから、ほぼ予想通りの顔ぶれになったといえる。
いずれも楽に勝ったわけではなかった。ブラジルはコロンビアに終盤追い上げられたし、ドイツもフランスに1点差。アルゼンチンはベルギーの猛攻にさらされ、オランダはPK戦の末に勝利した。試合経過だけ見れば激闘で、すべてが辛勝。すばらしい試合が連続した準々決勝に見える。
ただ、内容的には乏しかった。華麗な攻撃が陰を潜めたブラジル、先制点後は省エネ運転で逃げ切ったドイツ、イグアインのゴール後はメッシも消えたアルゼンチン、ロッベンもファンペルシーも沈黙させられたオランダ。しかし、危なげはなかった。「アルゼンチンは守りきるだろう」「PK戦でもオランダが勝つはず」。根拠はないけれど、そんなムードがあった。勝ち慣れている。勝ち方を知っている。どんな凡戦をしていても、最後は勝つ。彼らの発する「勝者のメンタリティー」が、そう思わせたのかもしれない。
常勝チームは「勝たなければ」と思い「勝てる」ことを信じる。逆に負けに慣れると「勝てるかな」と不安になり「勝たなくてもいいか」となる。この差は大きい。ボールを奪う足があと数センチ出るか、コンマ数秒早く動けるか。そんな小さな差が、勝敗を分ける決定的な要素になる。
ドイツ代表は、ロッカールームに過去の優勝チームのユニホームを並べた。選手たちは、初めて世界一になった54年スイス大会、地元74年大会、90年イタリア大会の栄光に背中を押されながら、ピッチに飛び出した。歴史の重みを背負って戦った。DFフンメルスのゴール、GKノイアーの好守など勝因はあるが、支えているのは「勝者のメンタリティー」。相手の国を凌駕する圧倒的な自信が、結果になって表れる。
日本にもある。例えば「お家芸」の柔道。過去の五輪で金メダル36個を獲得しているが、銀メダルは半分の18個しかない。決勝戦で3回に2回は勝っている。圧倒的な勝率だ。選手たちは「金メダルをとらなければ」という決意で畳に上がり「金メダルがとれる」という自信で戦う。最近は薄れてきているとも言われるが、日本柔道界の根底に流れているのも「勝者のメンタリティー」なのだ。
「ここまで来たら、あとは精神力」という言葉が、しばしば選手の口から出てくる。技術や戦術を支えているのはメンタル。猛暑や厳しい移動など環境に恵まれない今大会は、スタミナの消耗も激しい。それでも動くためには、強靱な精神力が必要になる。準決勝、決勝も精神力の戦いになるのは間違いない。
ネイマールを欠いた地元ブラジルは、体調不良者が多いと言われるドイツと対戦する。ディマリアが出場微妙なアルゼンチンは、4強の中で唯一優勝経験がないオランダと争う。決勝進出回数は、過去19大会でブラジルとドイツが7回、アルゼンチンが4回でオランダが3回。3位決定戦を含めて残り4試合、大会は終盤戦を迎える。