日刊スポーツのニュースサイト、ニッカンスポーツ・コムです。


ここからこのサイトのナビゲーションです




紙面企画

W杯のツボ

W杯のツボ

試合のプレー、珍プレーなどの出来事を掘り下げて検証する企画。南アフリカW杯の「スーパープレー、お宝発掘」をリニューアルし、スーパープ レーや勝負のあやに迫ります。

オランダがファンハール監督の奇策で勝利


<W杯:オランダ0(4PK3)0コスタリカ>◇準々決勝◇5日◇サルバドル

 オランダが、ルイス・ファンハール監督(62)の「奇策」でコスタリカとの準々決勝をPK戦で制した。0-0の延長後半まで3枚目の交代カードを残しておき、ロスタイムにW杯史上初の「PK戦要員」としてGKティム・クルル(26=ニューカッスル)を投入。期待に応える2本のストップが生まれ、2大会連続の4強入りを遂げた。今大会はシステムの途中変更など采配がさえ、初の頂点まで2勝に迫った。

 ファンハール監督が魔法をかけたのは、終了間際の延長後半15分51秒だった。ロスタイム表示の1分まで残り9秒、ギリギリの時間にクルルを送り込む。正GKシレッセンは不可解な表情でベンチに下がると、ペットボトルを蹴り上げた。「事前に言うと失望させるのでシレッセンには伝えていなかった」。一方のクルルとは「準備が必要だったので話し合った。(前後半の)90分が終わる前から考えていた」という秘策だった。

 舞台は高校サッカーではない。W杯だ。世界最高峰の大会で初の「PK戦要員」をファンハール監督は用意した。コスタリカのキッカー情報を伝えて送り出すと、クルルは相手の2人目ルイスと5人目ウマニャをセーブして帰ってきた。跳んだ方向も5人すべて合っていた。ヒーローを抱きしめ、頬を2度たたいて祝福した指揮官は「ちょっとしたトリックが成功した」と顔をさらに紅潮させた。

 勝負師の勘としか説明できない。起用理由について「選手には個性と特長がある。クルルの方がリーチが長く、より良い実績があった」と答えたが、名手とまでは言えない。ニューカッスルでの過去4シーズンでPK機会は20回あったが、止めたのは2回だけ。アヤックスでの過去3季で「16分の0」のシレッセンよりは上という程度で、身長も5センチ高い193センチだった。

 ただ、PK練習での動きが傑出していた。そこから逆算が始まる。決勝トーナメント1回戦のメキシコ戦が終わると、クルルにコスタリカのPK戦映像を見せて研究させた。ノーゴールの嫌な雰囲気の中、交代枠を1つ残す根拠になった。

 国の蓄積もあった。今大会後、オランダの監督に復帰する同国の名将ヒディンクが05年、オーストラリア代表を率いた時のこと。W杯ドイツ大会予選の大陸間プレーオフでウルグアイと対戦した際、PK戦を見越して202センチのGKカラッチを待機させていた。最終的に出番はないまま32年ぶりのW杯出場を決めたが、その策をファンハール監督は聞いていた。02年からGK登録人数が3人に義務づけられたことを受け、考案された起用法が、9年後に母国の大一番で実現した。

 「幸運なことに今日は成功したが、私の判断が間違っていた可能性もある。サッカーとはそういうものだ」。試合前に「俺は天才」と豪語し、紙一重のギャンブルに勝った知将。悲願の初優勝を視界にとらえた。

<ファンハール監督今大会の奇術>

 ◆5バック(1次L初戦・スペイン戦) オランダサッカーのベースとなる4-3-3から5バックに変更。前回王者に先制点を許すも、堅固な守備からロッベンを中心とした高速カウンターを仕掛け、5-1の圧勝を導いた。

 ◆交代選手2発(1次L第3戦・チリ戦) 後半30分から出場したFWフェルが、1分30秒後のファーストタッチで先制点。ロスタイムには同24分に出場したFWデパイがダメ押しゴール。途中出場した2選手の得点で、難敵チリを破った。

 ◆布陣3変化(決勝T1回戦・メキシコ戦) 試合中に布陣を3度変更。給水タイムの3分間で指示を送った。動きが悪かったFWファンペルシーに代えてフンテラールを投入。1得点1アシストと逆転勝利に直結した。

















ここからフッターナビゲーションです


PAGE TOP