【イチロー大相撲〈34〉】復刻!「力士 夏の絵日記」(上)

日刊スポーツは、2015~2019年にかけて「夏の絵日記」と題した企画をウェブに掲載してきました。力士や親方らに絵日記風の絵を描いてもらい、コメントをいただきました。

この企画はコロナ禍で消滅してしまったので、今回は過去の名作を「復刻版」としてあらためて紹介します。

日付、番付、写真などはすべて当時のものです。

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復刻!「力士 夏の絵日記」(下)は8月14日配信予定です。

才能が発掘された名作

「夏の絵日記」の企画は、玉鷲関に引っ張ってもらいました。この絵は、2015年の作品です。

今でこそ、絵も手芸も料理も得意であることはすっかり有名になりました。

当時はまだ、それほど知られておらず、作品を受け取ってから当社の担当者同士で驚いたことを覚えています。

「人間は、ハートでしょ。頭より、体より、ハート! 生きていくには、熱いハートが大事なんです」というコメントも、らしさ満載でした。

玉鷲関の写真もあえて、本人が選んだものです。一般的に顔に影がかぶらないように撮りますが、この影の写り方が芸術的だという理由でチョイスしたのでした。

玉鷲関はこの後も毎年、名作を仕上げてくれました。

錦木といえば酒

こちらは2019年の作品です。

錦木関といえば、酒。酒豪で知られています。期待通り、酒と枝豆を描いてくれました。

「もはや、週8くらいで飲んでいます」「体調が悪いときや外出しているときを除いていつも飲んでいる。体がなぜか欲してしまうんです」という当時のコメントも、なかなか豪快です。

酒飲みの錦木関ですが、朝稽古は欠かしません。巡業中も毎日必ず、朝稽古で土俵に上がる熱心さは有名です。

今年の夏巡業は8月4日から始まり、25日まで続きます。

行く先々で地元の名産や酒を楽しみ、稽古でお客様を喜ばせる。古き良き力士像が、錦木関にはぴったり合います。

名古屋場所あるある

こちらは、友風関の2019年の作品です。

愛知・瀬戸市にあるうなぎ店「田代」のうな丼を描きました。尊敬する兄弟子の嘉風関(現在の中村親方)行きつけの店で、当時の場所前は「7、8回は行った」とか。

名古屋場所では、どこのうなぎ店がうまいか、エアコンの設定温度は何度か、暑さは得意か苦手か、などが支度部屋での取材時には話題になりがちです(もちろん、取組の内容をしっかり聞いた後ですが)。

ピアノが得意の友風関らしく、楽譜の一部も描き込んであります。

左の五線譜は左手、右は右手の譜面でしょうか。実は、何かの曲の一節かもしれないと、今気づきました。

ただのドラえもんではない

阿炎関による2019年の作品です。

記者からの「なぜドラえもん?」という問いに、当時こう答えていました。

「これは今の自分を表現しているんです。顔は笑っていても目は血走っているでしょ? これは巡業は長時間移動もあるし、いろんな人と稽古して疲れるけど、ファンの応援はありがたい。そん気持ちが出ているんです」

安直にドラえもんを描いたわけではない。そんな思いがにじみ出ています。

たしかに巡業の移動は大変そうです。

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スポーツ

佐々木一郎Ichiro Sasaki

Chiba

1996年入社。2023年11月から、日刊スポーツ・プレミアムの3代目編集長。これまでオリンピック、サッカー、大相撲などの取材を担当してきました。 X(旧ツイッター)のアカウント@ichiro_SUMOで、大相撲情報を発信中。著書に「稽古場物語」「関取になれなかった男たち」(いずれもベースボール・マガジン社)があります。