【イチロー大相撲〈41〉】「いまさら聞けない?!大相撲」の舞台裏と後日談

「いまさら聞けない?!大相撲」という企画が、NHK大相撲中継で放送された。

秋場所7日目の9月14日のこと。視聴者からの質問に対し、甲山親方(元幕内大碇)、清見潟親方(元関脇栃煌山)、楯山親方(元幕内誉富士)が実演をまじえて説明していった。

実にわかりやすく、素晴らしい企画だった。その舞台裏と後日談を、3人の親方に聞いた。

大相撲

楽しく、明快で、参考になる企画だった。

「いまさら聞けない?!大相撲」というNHK大相撲中継内の企画は、「知っているようで実は知らない相撲のあれこれを大解剖」「相撲ビギナーでもこの放送を見れば相撲のイロハが分かる」というコンセプトで放送された。7日目の取組の間の時間を使って、親方による「実演解説」が行われた。

正面解説の音羽山親方(元横綱鶴竜)は言葉で説明し、国技館内の相撲教習所では甲山親方の解説のもと、清見潟、楯山の両親方が体を張った。

NHKの調べによれば、視聴者がわかりにくいと感じた相撲用語は、次の表の通り(数字は、説明できない人の割合)。


はず押し66%
おっつけ45%
四つ39%
巻きかえ37%
前みつ37%
本割36&
いなす35%
電車道34%
突き落とし 引き落とし はたき込み33%
水つけ30%
かち上げ28%
締め込み28%
上手投げ 下手投げ23%
寄り切り 押し出し16%
大銀杏10%

放送では、技を説明する際、攻める側を清見潟親方、攻められる側を楯山親方が、実際にまわしを締めて実践した。

失礼ながら、決して技巧派ではなかった清見潟親方が、技を決めまくる。楯山親方は、投げられっぱなし。この役割分担は、どうやって決まったのか。ぜひとも聞きたかった。

ダメ出しされていた「上手出し投げ」

まずは、清見潟親方に聞いた。

―放送後の反響はいかがでしょうか

清見潟親方 「売店で仕事をしていても、お客さんから『良かったです』とか『すごいわかりやすかったです』」とか言ってくれます」

―企画はいつごろ聞かされて準備されたんですか

清見潟親方 「ちゃんと決まったのは場所前。名古屋に行く前ぐらいに、その話が出ていたような気がしたんですけど。そうですね、ちゃんと決まったその9月。場所前です」

―リハーサルや準備は大変だったのでは

清見潟親方 「いやいや、その日にまわしを締めてやるだけなので。どの位置でやれば(視聴者が)見やすいとか、そういうのはやったんすけど、あとはもう、そうですね」

両国国技館の2階売店でレジを担当する清見潟親方(元関脇栃煌山)(左)と友綱親方(元関脇魁聖)

両国国技館の2階売店でレジを担当する清見潟親方(元関脇栃煌山)(左)と友綱親方(元関脇魁聖)

―清見潟親方が攻め役でした。これはどうやって決めたのですか

清見潟親方 「楯山親方が『(攻めを)やってください』って言ってくれて。どっちかに決めた方が、皆さんもわかりやすいと思いますし。楯山親方の受け身が良すぎて、もうそのおかげです。きれいに。僕、あんな投げできないんで、ふふふふふ」

―失礼ながら、栃煌山関が出し投げで勝った記憶はあまりありませんでした。ありましたっけ?

清見潟親方 「いやいや、ない。ないです、ないです。出し投げはするんですけど、自分の出し投げは、もう本当に、なんて言うんですかね、師匠によく言われるんですけど、『ドアを閉めるように出し投げを打つ』って」

―どういう意味ですか

清見潟親方 「こうやるんです。真横に振ってしまうんで、決まらないんですよ。自分はもう、ぎゅっと体の、なんて言うんすかね、力と遠心力とかで、相手を崩すんです、思いっきり」

―出し投げで決めるわけでなく、出し投げで崩すんですね

清見潟親方 「崩して出る。でもたまに(出し投げを)食う人がいるんですよ。いつも普通にやらない感じで投げるんで。でも、僕のやつなんか決まらない。楯山親方がポローンと決まってくれて。あと、やっぱ、甲山親方が手の位置とか、こう、ぱって添えてくれるんで」

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スポーツ

佐々木一郎Ichiro Sasaki

Chiba

1996年入社。2023年11月から、日刊スポーツ・プレミアムの3代目編集長。これまでオリンピック、サッカー、大相撲などの取材を担当してきました。 X(旧ツイッター)のアカウント@ichiro_SUMOで、大相撲情報を発信中。著書に「稽古場物語」「関取になれなかった男たち」(いずれもベースボール・マガジン社)があります。