【朝乃山を追う:24年名古屋場所〈上〉】引退もよぎった大けが 一山本からのまさかの当日電話
過去最大の試練に直面した。大関経験者の朝乃山(30=高砂)が、7月17日、東前頭12枚目で臨んだ名古屋場所4日目の一山本戦で大けがを負った。左膝から崩れるように押し倒されて敗れ、自力で立てずに車いすで土俵を離れた。車いすのまま、名古屋市消防局のハイパーレスキュー隊の特殊車両に乗り込み、同市内の病院に緊急搬送。「左膝前十字靱帯(じんたい)断裂、左膝内側側副靱帯損傷、左大腿(だいたい)骨骨挫傷」の診断書を提出し、翌5日目から休場した。3勝2敗10休で、秋場所は西十両3枚目に番付を下げた。年内復帰は絶望の中、8月末、都内の部屋で知られざる胸中を語り尽くした。
大相撲
- 【22年名古屋編】心鬼にした“富山のじいじ”に応えられるか
- 【22年秋場所編】叶わなかった1場所昇格、引退よぎるほど痛恨の黒星
- 【23年初場所編】初黒星に沈む息子 亡き父に代わりゲキを送った母
- 【23年春場所編〈上〉】まぶしく見えた幕内土俵
- 【23年春場所編〈下〉】戻りたい「富山のスーパースター」
- 【23年夏場所〈上〉】母に告げた言葉、引退恩人への感謝
- 【23年夏場所〈下〉】「今の三役は非常に強い」危機感
- 【23年名古屋場所〈上〉】「出たい…」思い出したあの日々
- 【23年名古屋場所〈下〉】熱く語った再出場の理由
- 【23年秋場所〈上〉】負けた年下ライバルへの敬意
- 【23年秋場所〈下〉】「熱海富士は誰と?豊昇龍?面白そう」
- 【23年九州場所〈上〉】「途中出場を決断した理由
- 【23年九州場所〈下〉】「来年は30歳。あきらめないで頑張りたい」
- 【24年初場所〈上〉】優勝争いの単独トップに
- 【24年初場所〈下〉】三役復帰は目前に
- 【24年春場所〈上〉】三役復帰へ、迷いを吹き飛ばした前半戦
- 【24年春場所〈下〉】ついに三役復帰へ
- 【24年名古屋場所〈上〉】引退もよぎった大けが
- 【24年名古屋場所〈下〉】忘れられない叙々苑の弁当
「引退しようかと思っていました」
驚くほど表情は明るかった。
名古屋場所千秋楽2日後の7月30日に都内の病院で手術。2週間余りの入院を経て、自室のある部屋に戻ったのが「8月14日か15日」だという。
そこから2週間足らず、8月27日に東京・両国国技館で行われた力士会に、軽快な足取りで姿を見せていた。
翌28日には、部屋の地下にあるトレーニング室で、けがして以来となるまわし姿で、上半身のトレーニングを行っていた。
朝乃山 「回復は早いですね。手術を受けたのは、入門してから初めて。中学生の時以来です(中学3年時に左肘骨折)。
本土俵に復帰できる目安は『8カ月から1年』と、先生には言われています。
来年の初場所だと6カ月。足りないんですよ。いくら回復が早くても、30歳のけが。大事にいった方がいいと思うので、復帰はおそらく来年の春場所です。
また三段目からやり直しですね(苦笑)」
初土俵が三段目100枚目格付け出しだった。
その4年後に大関昇進。
だが、コロナ禍のガイドライン違反で6場所の出場停止処分を受け、大関から三段目まで番付を下げた。
そこからじわじわと番付を戻し、今年の夏場所で3年ぶりに三役復帰の小結となった。
かねて「元の番付に戻りたい」と話しており、大関の昇進目安は三役で3場所33勝。まずは起点づくりを目標としていた矢先に、右膝をけがしての夏場所を全休。再び三役を目指して初日から3連勝と好調だった名古屋場所で、予想もしない試練が待っていた格好だ。
朝乃山 「本人が一番、予想していなかったです。けがした時は本当に、引退しようかと思っていました。そこまで追い込まれていました。
30歳で靱帯断裂って、話にならないじゃないですか。
本文残り64% (2370文字/3716文字)
高田文太Bunta Takada
1999年入社。現在のスポーツ部ではサッカー(1)→バトル→五輪→相撲(1)→(5年半ほど他部署)→サッカー(2)→相撲(2)→ゴルフと担当。他に写真部、東北総局、広告事業部にも在籍。
よく担当や部署が替わるので、社内でも配った名刺の数はかなり多い部類。
数年前までは食べる量も社内でも上位で、わんこそばだと最高223杯。相撲担当になりたてのころ、厳しくも優しい境川親方(元小結両国)に「遠慮なく、ちゃんこ食っていけ」と言われ、本当に遠慮なく食べ続けていたら、散歩から戻った同親方に「いつまで食ってんだ、バカヤロー!」と怒られたのが懐かしいです。
-
大相撲
【羽出山の新十両昇進会見全文】東村山市出身 志村けんさんにあかやる夢を語った
【羽出山の新十両昇進会見全文】東村山市出身 志村けんさんにあかやる夢を語った 2025年1月の大相撲初場所の番付編成会議…
高田文太
-
大相撲
【琴櫻の言葉】勝った瞬間、感情を抑えた品格 気持ちの安定がもたらした初V
【琴櫻の言葉】勝った瞬間、感情を抑えた品格 気持ちの安定がもたらした初V 大相撲九州場所で初優勝した大関琴櫻(27=佐渡…
高田文太
-
大相撲
元大関貴景勝の湊川親方が近況を語った「無理して食べなくてよくなった」
元大関貴景勝の湊川親方が近況を語った「無理して食べなくてよくなった」 元大関貴景勝の湊川親方(28)が、現在の思いや生活…
高田文太
-
大相撲
【朝乃山を追う:2024年9月】どうなる番付?「また落ちるところまで落ちて、やっ…
【朝乃山を追う:2024年9月】どうなる番付?「また落ちるところまで落ちて、やっていくと」 7月の大相撲名古屋場所で、左…
高田文太
-
大相撲
【妙義龍の引退会見全文】「師匠から『思いっきりやれ』『堂々といけ』と言っていただ…
【妙義龍の引退会見全文】「師匠から『思いっきりやれ』『堂々といけ』と言っていただいた」 最高位関脇の妙義龍(37=境川)…
高田文太
-
大相撲
【琴栄峰の新十両会見全文】「兄弟で優勝決定戦できるぐらいになりたいです」
【琴栄峰の新十両会見全文】「兄弟で優勝決定戦できるぐらいになりたいです」 大相撲九州場所(11月10日初日、福岡国際セン…
高田文太
-
大相撲
【大の里の大関昇進会見全文】「このような人は現れないっていうぐらいのお相撲さんに…
【大の里の大関昇進会見全文】「このような人は現れないっていうぐらいのお相撲さんになりたい」 関脇大の里(24=二所ノ関)…
高田文太
-
大相撲
【朝乃山を追う:24年名古屋場所〈下〉】忘れられない叙々苑の弁当 若隆景からの情…
【朝乃山を追う:24年名古屋場所〈下〉】忘れられない叙々苑の弁当 若隆景からの情報収集 大関経験者の朝乃山(30=高砂)…
高田文太
-
大相撲
【朝乃山を追う:24年名古屋場所〈上〉】引退もよぎった大けが 一山本からのまさか…
【朝乃山を追う:24年名古屋場所〈上〉】引退もよぎった大けが 一山本からのまさかの当日電話 過去最大の試練に直面した。大…
高田文太
-
大相撲
【白熊の言葉】「大の里とも距離があったんですけど、少し近づいて…」/会見全文
【白熊の言葉】「大の里とも距離があったんですけど、少し近づいて…」/会見全文 大相撲秋場所(9月8日初日、東京・両国国技…
高田文太
-
大相撲
【阿武剋の言葉】「自分、映っていると思っていたんですけど、映っていなかったです」…
【阿武剋の言葉】「自分、映っていると思っていたんですけど、映っていなかったです」/会見全文 大相撲秋場所(9月8日初日、…
高田文太
-
大相撲
【照ノ富士の言葉】「14年間やってきて、今の力士たちが一番強いなと自分の中でも感…
【照ノ富士の言葉】「14年間やってきて、今の力士たちが一番強いなと自分の中でも感じる」 名古屋場所で通算10度目の優勝を…
高田文太
-
大相撲
【高砂部屋の面々〈8〉】朝東が序二段優勝 中学時代は美術部だった
【高砂部屋の面々〈8〉】朝東が序二段優勝 中学時代は美術部だった 高砂部屋の“愛されキャラ”朝東(25)が、入門7年目で…
高田文太
-
大相撲
【大の里の言葉】「いやぁ、年内はきついんじゃないですかね、はい」優勝一夜明け会見…
【大の里の言葉】「いやぁ、年内はきついんじゃないですかね、はい」優勝一夜明け会見全文 大相撲夏場所で、初土俵から所要7場…
高田文太
-
大相撲
【琴恵光の言葉】「稽古場だけが稽古じゃない」引退会見全文
【琴恵光の言葉】「稽古場だけが稽古じゃない」引退会見全文 大相撲の元幕内で西幕下11枚目の琴恵光(32=佐渡ケ嶽)が、夏…
高田文太
-
大相撲
【大の里の言葉】「6時ぐらいに起きて、番付が来るのを楽しみに」番付発表会見全文
【大の里の言葉】「6時ぐらいに起きて、番付が来るのを楽しみに」番付発表会見全文 大相撲で昨年夏場所に幕下10枚目格付け出…
高田文太
-
大相撲
【朝乃山を追う:24年春場所〈下〉】ついに三役復帰へ
【朝乃山を追う:24年春場所〈下〉】ついに三役復帰へ 3月1日に30歳の誕生日を迎え、30代として最初の本場所に臨んだ大…
高田文太
-
大相撲
【朝乃山を追う:24年春場所〈上〉】三役復帰へ、迷いを吹き飛ばした前半戦
【朝乃山を追う:24年春場所〈上〉】三役復帰へ、迷いを吹き飛ばした前半戦 3月1日に30歳の誕生日を迎え、30代として最…
高田文太