大泉洋史上最高にカッコいい/室町無頼(日)
見終わった後も、男たちの熱量が熾火(おきび)のように身体に残った。室町時代、応仁の乱が起こる前の京の都が舞台。権力者は飢饉(ききん)と疫病に苦しむ民を顧みず、貧富の差は広がるばかり。悪政を覆そうと、武士階級として日本で初めて一揆を起こした男たちの戦いを描く。
直木賞作家、垣根涼介氏の同名小説が原作で、主人公の剣の達人・蓮田兵衛を大泉洋が演じた。コミカルなキャラは封印し、宣伝文句の“大泉洋史上最高にカッコいい男”に成りきった。兵衛の悪友で、傭兵(ようへい)をたばね、幕府の治安維持にあたる骨皮道賢(堤真一)は内部から体制を揺さぶろうとする。堤のすごみが物語に深みをもたらしている。兵衛に武術の才能を見いだされる才蔵役の長尾謙杜(なにわ男子)の6尺棒をふるうアクションに目を見張った。
燃えさかるたいまつを持って人々が京の街を駆け抜ける一揆の迫力は圧巻だ。怒りの炎だ。閉塞(へいそく)感の漂う時代は、どこか現代にも通じる。兵衛と骨皮は実在したとされる人物。日本史の教科書に登場する偉人ではないが、地べたから社会を見る「無頼」たちの時代を変えようとする熱量はすごい。【松浦隆司】
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