【宇都宮ブレックス〈53〉】ブラスウェルHC単独インタビュー&記者が見た「実像」(下)

宇都宮ブレックスはプレシーズンゲームで4連勝を飾りました。ケビン・ブラスウェルヘッドコーチ(HC)が目指すアップテンポのバスケットが、早速機能しています。誰に対してもオープンで、言うべき事があればしっかり根拠を示して説明するのが、ブラスウェルHCのやり方です。新しい風を送り込み、ブレックスをどこに導こうとしているのでしょうか。8月26日に行った単独インタビューをもとに迫ってみました。2回続きの最終回です。

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【次回予定〈54〉プレシーズンゲームとっておき写真一挙放出】

◆ケビン・ブラスウェル 1979年1月23日生まれ、アメリカ・メリーランド州ボルティモア出身。2002年にベルギーでプロ選手としてデビューし、イタリア、トルコ、オーストラリア、ニュージーランドなどでプレー。2016年、現役引退後すぐにウェリントン・セインツ(ニュージーランド)のHCに就任。2021年に来日し、2年間秋田ノーザンハピネッツでACを務めたあと、2023年に宇都宮ブレックスに加入した。身長は188センチ。現役時代のポジションはポイントガード。

チャンピオンシップ第3戦がスタートライン

8月31日信州とのプレシーズンゲーム。HC就任後初勝利を上げたブラスウェルHCだが、試合終了の瞬間は冷静だった

8月31日信州とのプレシーズンゲーム。HC就任後初勝利を上げたブラスウェルHCだが、試合終了の瞬間は冷静だった

8月31日、栃木県立県北体育館で行われたプレシーズンゲーム、信州ブレイブウォリアーズ戦。13点差をつけ、ブレックスのHCとして「初勝利」を挙げた瞬間のブラスウェルHCに笑顔はありませんでした。

スコアは91―78。小川敦也選手がブレックス入り後初めてスタメンで出場し、プロ最長の24分28秒プレーして、アップテンポの攻撃バスケを見事にけん引しました。

ブラスウェルHCは「チームとして成長できた試合」と、小川選手はじめ若手選手の活躍を高く評価していましたが、一方で「課題」も見つけていました。

翌9月1日の福島ファイヤーボンズ戦は69―48で勝ち、プレシーズンゲーム2連勝。前日に比べて得点は伸びませんでしたが、失点を大幅に抑えました。試合後、ブラスウェルHCはこう話しました。

今日はディフェンスが大きなテーマでした。20点以上失点するクォーター(Q)が1つもありませんでした。前日の試合から自分たちの課題を見つけ、改善策を考え、遂行できました。

今シーズン初戦快勝直後に笑顔がなかったのは、ディフェンス面に納得がいかなかったからなのでしょう。

PDCA(Plan→Do→Check→Act)のサイクルをいかに速く回すか。ブラスウェルHCの流儀の1つのようです。

(8月26日のインタビューから)

―チーム始動日の8月19日、そして今日26日と、2日ほど練習を見させていただきました。練習中、選手たちに常に大きな声を出すように指示されていましたが、その意図は何でしょうか

昨シーズンのチームはとても良いチームでしたが、最終目標には届きませんでした。チャンピオンシップ(CS)クォーターファイナル千葉ジェッツとの3戦目はリバウンドがもう少し良かったら勝っていたはずです。コミュニケーションが不足していたからディフェンスの相手をスイッチせざるを得なくなり、リバウンドをとられてしまいました。

レギュラーシーズンで51勝しましたが、ぎりぎりの勝利もありました。名古屋ダイヤモンドドルフィンズとの2戦目(2023年10月29日)がそうですし、D.J(#25ニュービル選手)のシュートがエアボールになって、アイザック(#42フォトゥ選手)が触って勝ったファイティングイーグルス名古屋戦(2024年2月3日)もそうです。勝つには勝ちましたが、そういう時はチームとしてのコミュニケーションが良くありませんでした。

全体的に見ればオフェンスはもちろん、ディフェンスも素晴らしいチームでしたし、私がHCになったからといって多くの事を変えるのは良くありません。しかし、チームが成長して行くには、苦しい状況の時にこそコミュニケーションが必要です。選手だけではなく、スタッフにも言えることです。どんな状況でも、どんな時間帯であっても、コミュニケーションを取り続ける事をみんなに求めています。それが自分たちをさらに高いところに連れて行ってくれると思っています。

昨シーズンのCSでは千葉ジェッツの前に悔しい敗戦

昨シーズンのCSでは千葉ジェッツの前に悔しい敗戦

―19日の初めての全体練習前、CSの千葉Jとの3戦目の映像を選手たちに見せていました。具体的にどのシーンを指して話をされたのですか

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1988年入社。プロ野球を中心に取材し、東京時代の日本ハム、最後の横浜大洋(現DeNA)、長嶋巨人を担当。今年4月、20年ぶりに現場記者に戻り、野球に限らず幅広く取材中。