【新企画 吹奏楽の世界】コロナ欠場から3年~箕面自由学園が目指すマーチング日本一

全日本マーチングコンテストは11月16、17日に大阪城ホールで開催される。奏でる音楽は力強く、美しい旋律を響かせ、マーチングはどこまでも規則正しい。高校の部に出場する注目校を紹介。夢の舞台に立つまでの軌跡を描く。第1回は3年連続金賞を目指す大阪の箕面自由学園吹奏楽部。(敬称略)

その他スポーツ

新連載「マーチングにかける青春」スタート
第2回は11月11日 早稲田摂陵を掲載

全日本マーチングコンテスト 出場校(出演順)

〈高校以上 前半の部〉

愛工大名電、活水、白子高、滝川二、早稲田摂陵、叡明、高知学芸、松戸六実、東農大二、船橋、精華女子、東海大高輪台、神村学園、出雲商、多賀城、箕面自由学園、出雲北陵、金沢学院大付

〈後半の部〉

春日井西、北海道遠軽、柏、仙台向山、安城学園、京都両洋、習志野高、聖ウルスラ学院英智、九州産大付、伊奈学園総合、京都橘、江南、広島翔洋、城ノ内中等教育、松江商、熊本工、玉名女子、富山商

全日本マーチングコンテストで3年連続金賞を目指す本年度の箕面自由学園吹奏楽部のメンバー

全日本マーチングコンテストで3年連続金賞を目指す本年度の箕面自由学園吹奏楽部のメンバー

涙のミーティング
~届かなかった夢

〈プロローグ〉

忘れることのないミーティングがある。

無機質な画面の奥で部員全員が泣き崩れた光景。

人と人との距離が遠ざかっていたあの頃、ぬくもりは感じられなくとも、生徒の悲しみは痛いほど伝わった。

すすり泣きする音が、かすかに響いてくる。

どうしても立ちたかった舞台だった。

そのために、どれほどの努力を重ねてきただろうか。

「最後まで諦めず、残っていた3年生だけでも出よう。そう思ってやってきましたが…残念ながら…」

監督の福里大輔が言葉を絞り出すように告げる。

「みんなの夢は届きませんでした」

新型コロナウイルスが猛威を振るい、過去最大ともいわれた第5波の最中にいた2021年の夏。

吹奏楽はどうしても密室での練習になる。

体調不良者が1人、また1人と出ていた。

2021年のメンバーたち(吹奏楽部提供)

2021年のメンバーたち(吹奏楽部提供)

「いる生徒だけでもいい。どうしても出してあげたかった。

この人数を超えたら休めという規定があったんです。いろんな対策をしていたんですが、ほぼ全員。大会2日前でした。もう休まざるを得ませんでした」

オンラインでのミーティング。画面の向こうには、高熱を出してホテルに隔離されている生徒もいた。

箕面自由学園吹奏楽部は、全日本へとつながる大阪マーチングコンテストを欠場。目指してきた道は途絶えた。

それから2カ月後。

福里は全日本の会場に部員全員を連れて行った。

そこに、彼らのステージはない。

「来年、必ずみんなでここに来よう」

そう全員で誓い合った。

あれから2年連続で全日本で金賞をつかんだ。

今年も再び、約束の場所へ。

マーチングに青春をささげるチームを追った。

コロナ禍で夢が絶たれた2021年の箕面自由学園(吹奏楽部提供)

コロナ禍で夢が絶たれた2021年の箕面自由学園(吹奏楽部提供)

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編集委員

益子浩一Koichi Mashiko

Ibaraki

茨城県日立市生まれ。京都産業大から2000年大阪本社に入社。
3年間の整理部(内勤)生活を経て2003年にプロ野球阪神タイガース担当。記者1年目で星野阪神の18年ぶりリーグ制覇の現場に居合わせた。
2004年からサッカーとラグビーを担当。サッカーの日本代表担当として本田圭佑、香川真司、大久保嘉人らを長く追いかけ、W杯は2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、ラグビーW杯はカーワンジャパンの2011年ニュージーランド大会を現地で取材。2017年からゴルフ担当で渋野日向子、河本結と力(りき)の姉弟はアマチュアの頃から取材した。2019年末から報道部デスク。
大久保嘉人氏の自伝「情熱を貫く」(朝日新聞出版)を編集協力、著書に「伏見工業伝説」(文芸春秋)がある。