【吹奏楽の世界】早稲田摂陵「歴史を引き継ぐ使命」10年ぶりに立つ全日本マーチング

阪急少年音楽隊の流れをくむ早稲田摂陵高が、10年ぶりに全日本マーチングコンテスト(11月16~17日、大阪城ホール)に戻ってくる。世界で初めてステージマーチングを披露した伝説のウィンドバンド。阪急時代から受け継ぐ赤と白のユニホームで古豪復活を目指すチームを紹介する。(敬称略)

その他スポーツ

マーチングにかける青春〈2〉

西宮球場で演奏する阪急少年音楽隊(学校提供)

西宮球場で演奏する阪急少年音楽隊(学校提供)

伝説のウィンドバンド
ルーツは阪急少年音楽隊

大阪の北部、北摂山系から吹く風は冷たく、秋の深まりを感じさせた。

すっかり日が沈んだ校庭に部員たちが出てくる。

テキパキと動く姿は心地よく見えた。

隊列が組まれるとすぐに演奏が始まる。

ナイターに照らされ、地面に落ちる影。それは、とても美しいものだった。

高く上がった膝。

鋭く向きを変えるターン。

演奏の合間には、寸分の狂いさえもなくなるように声を掛け合っている。

全ての動きに無駄がない。

これが伝説のウィンドバンド。

凜々(りり)しく、堂々として、脈々と受け継がれてきたものだった。

「ただ勝つだけではありません。伝統を引き継ぐことが1番の使命。このバンドの火を消してはいけない。名前は変わっても、歴史は生き残っています」

そう話してくれたのは阪急少年音楽隊で育ち、現在は早稲田摂陵で吹奏楽コース長を務める川口尚である。

かつて存在したプロ野球阪急ブレーブスの本拠地、西宮球場の内野席5~6階には企業内高校として阪急商業学園があった。

そこに音楽隊が誕生したのは1957年(昭32)。

それから40年が過ぎて女子生徒が入学。長い歴史を経て、早稲田摂陵に移管されたのは今から15年前のことだ。

男子から女子へ。兵庫から大阪へ。時代の流れとともに音楽隊は移り変わっていく。

それでも変わらないものもある。

赤白のユニホームと、高く膝を上げたハイステップ。

10年ぶりに全日本の舞台に戻ってきた伝説のウィンドバンドを描く。

早大の系列校~来春から早稲田大阪

〈早稲田摂陵高校〉

前身は1962年(昭37)創立の日本繊維工業高で、64年に校内に通信制の向陽台高を併設。09年に早大の系列校となり早稲田摂陵に改称、向陽台高の吹奏楽コースを早稲田摂陵吹奏楽コースとして移管。10年に共学化(吹奏楽コースは女子)。25年4月から早稲田大阪に校名変更予定。所在地は大阪府茨木市、村上徹校長。

9月の関西マーチングコンテスト 早稲田摂陵は金賞を受賞した

9月の関西マーチングコンテスト 早稲田摂陵は金賞を受賞した

本文残り78% (3223文字/4123文字)

編集委員

益子浩一Koichi Mashiko

Ibaraki

茨城県日立市生まれ。京都産業大から2000年大阪本社に入社。
3年間の整理部(内勤)生活を経て2003年にプロ野球阪神タイガース担当。記者1年目で星野阪神の18年ぶりリーグ制覇の現場に居合わせた。
2004年からサッカーとラグビーを担当。サッカーの日本代表担当として本田圭佑、香川真司、大久保嘉人らを長く追いかけ、W杯は2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、ラグビーW杯はカーワンジャパンの2011年ニュージーランド大会を現地で取材。2017年からゴルフ担当で渋野日向子、河本結と力(りき)の姉弟はアマチュアの頃から取材した。2019年末から報道部デスク。
大久保嘉人氏の自伝「情熱を貫く」(朝日新聞出版)を編集協力、著書に「伏見工業伝説」(文芸春秋)がある。